10月 25 2008

妊婦の救急疾患

Published by at 0:04:44 under 医師不足,妊娠・出産・育児

東京都内の妊婦(36)が都立墨東病院(墨田区)など7カ所の医療機関に診療を断られた後、最終的に救急搬送された墨東病院で赤ちゃんを出産後、脳内出血の手術を受け、3日後に死亡していたという気の毒なニュースが問題になっています。

お亡くなりになった方のご冥福をお祈りいたします。さぞご無念であったことと思います。

その上で、の話です。

舛添厚生労働大臣がわざわざ墨東病院を視察したとか、石原東京都知事とバトルをしているとか、そんなことまで話題になっています。

墨東病院は、緊急対応を必要とする妊婦や新生児を受け入れる都が指定した医療機関です。当直に当たる産科医師の1人が退職し、土日の当直医は一人体制になってしまい、妊婦が搬送された当日は研修医1人が当直していました。

研修医とは言うものの、後期研修医で4年目のドクターだそうです。レジデントといってよいでしょう。私が4年目というとまあ外科当直を一人でこなしていました。もちろん手術のときは指導医の先生を呼び出して一緒に手術をしていました。脳内出血の妊婦という困難な症例を当直のドクターが一人で対応できないのは当然だと思います。責めるのは気の毒です。

また、脳内出血の妊婦に緊急帝王切開および血腫除去術を行おうとすると、

産婦人科医2名

小児科医

脳外科医2名

麻酔科医

4つの科6名の医師が必要になる可能性があります。さらに、NICU(生まれてきた赤ちゃんも状態によっては新生児集中治療室に入る可能性が高いです)に空きベットがあり、手術室がスタンバイOKであり(他に緊急手術などをしている最中には受け入れは困難)ICU(緊急帝王切開および開頭術の術後のお母さんは集中治療室で管理する可能性が高いと考えられます)にも空床がなければなりません。

結構条件は厳しいです。産科だけの問題ではありません。産科の先生が受け入れようと思ってもすぐに体勢を整えられない可能性があります。脳外科のドクターが必ず当直している病院などほとんどありませんし、麻酔科医も当直ではなくオンコールで対応しているところもあります。

墨東病院で産科の当直を毎日2人体制にするとなれば(常勤医は4人なのだそうです)、ドクターの負担はさらに増え、今回の出来事(事故とは呼びたくありません)で大いに傷つき精神的にストレスを受けたであろうドクターが今後の診療に耐えていけるのか心配です。また退職者が出るのではないかと危惧されます。

舛添さんと石原さんのバトルはどうなるでしょうか。私に言わせればどっちもどっちです。国の責任とすれば医師不足に対する無策、都の責任とすれば退職した産科医の補充をしないまま「総合周産期母子医療センター」なるものを続けさせたこと、でしょうか。

2 responses so far

コメント(2) “妊婦の救急疾患”

  1. EXILEon 30 10月 2008 at 18:27:45

    今日の先生方の話を聞いていると、本当に医師って大変なんだなあと思ってしまいます。僕は医学部にいる身なので医師寄りな思考ですがもっと働きやすい環境になってほしいです。二人で当直は厳しいでしょうが、今の日本の医療がこのような危うい体制で保たれているのがまあ本当に奇跡ですな。

  2. adminon 30 10月 2008 at 22:07:38

    当直で眠そうな顔をしているだけで患者さんに文句を言われることもあります。仕事だろ、といわれるとそれまでなんですが・・・前の日も眠れていないこともあるし、翌日の勤務を考えたら少しでも仮眠を取ろうと無理に眠った直後のこともあるし・・・
    医師・患者間の信頼関係を築かないと医療は崩壊しっぱなしだと思いますよ。

Trackback URI | Comments RSS

コメントを残す