5月 31 2011

抗加齢医学会総会に参加して(3)咀嚼と嚥下について

Published by at 6:05:01 under アンチエイジング,学会活動

私は常日頃、歯に無頓着な人が多いと感じています。

私自身は昔から自分の歯並びが悪いことを気にかけており、34歳になって歯科矯正をはじめました。今のところ齲歯はありません(治療済みが1本)。歯が悪くなりやすいといわれる妊娠中も軽い歯肉炎程度まででなんとか問題なく過ごしました。これからはむしろ歯周病のほうが問題になってくる年齢だと思いますので、注意しなければならないと思っています。

歯並びについては個人の好みの問題かもしれないなので矯正は別にしなくてもいいと思いますが、虫歯や歯周病は予防したほうがいいに決まっています。自分の歯を失わないための努力が必要です。また歯周病が全身の内科的疾患の原因になることがあると最近言われるようになってきました。

患者さんがふだんは入れ歯をされていても、手術の際には義歯をすべて外すことになりますので、その時にはじめて歯が悪いことに気づいてドキッとすることがあります。歯周病でグラグラだったり、虫歯でボロボロだったり、自分の歯が殆ど無かったりすると、挿管の際に折れて(抜けて?)しまわないか、術後誤嚥の原因になりやしないかと気になります。

なぜこんなことを考えるといえば、消化管の手術後には「消化のよいものをよく噛んでゆっくり食べてください」とご注意申し上げることにしているからです。しかし、自分の歯がぼろぼろであってはろくに噛まないまま飲み込んでしまい、胃腸に負担をかけることになります。

今回、抗加齢医学会で日本歯科大学菊谷武先生による咀嚼と嚥下の話があったので聞いてきました。このお話もなかなか面白かったです。

まず、いまや交通事故死よりも窒息による死亡の方が数が多いのだそうです。老健などで調査すると、窒息のリスクは
(1)臼歯部の咬合がない(つまり奥歯がない)
(2)認知機能低下
(3)食事が自立している(自分でたべている)
ということになるそうです。

奥歯がないとやはり窒息しやすいのですが、それでも、義歯をいれておけば自分の歯ほどではなくともこのリスクを下げられるので歯科治療の意義は大きいと言えます。
(2)は当然といえば当然です。(3)は、意外なようですが、すでにいろいろ体の機能が低下しているため(老健におられるような状態なので)、自分で口に含む量や速度を加減できないからむせても平気で口に入れてしまうのではないかと推測しておられました。

また、誤嚥などのために胃瘻を作ることがありますが、胃瘻造設後に「食べる機能」を再評価することは殆ど無いことを問題提起されました。すなわち、一時的に「食べる機能」が低下して胃瘻造設をしたとしても、また「食べる機能」が回復する可能性はあるわけです。それなのに、一度胃瘻を作ってしまうとそのまま胃瘻ですごさせてしまうことがほとんどだというのです。

私はいままで歯のことだけを気にしていましたが、咀嚼器官は歯だけではないというお話も印象的でした。
我々は、食べるものの性状によって下や顎の動かし方を変えているのだそうです。たとえば堅いものを食べる時には、下顎と舌を横方向にも動かしています。高齢者の中には堅いものを食べているときにもこの横方向の動きができなくなっている方がいて、うまく咀嚼できないのです。
咀嚼するための筋力が落ちてしまっているからで(運動障害制咀嚼障害)いわゆるサルコペニアが口腔にも生じているといえます。

消化管の一番上流である口腔の機能はその下流の胃や腸にとっても重要です。歯は大事だと思ってずっとその重要性を主張してきましたが、重要なのは歯だけではないのだと納得しました。しかし、毎日何かしら食べていて、どうしてサルコペニアが起きるのかちょっとよくわかりません。健康増進のために運動をするように、咀嚼力維持のために咀嚼筋に負荷をかけてトレーニングをしなければならないのかもしれません。そういうトレーニングの道具があることも紹介されていました。

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