12月 01 2010

救急外来受診・・・寸前でした

Published by at 13:37:19 under 妊娠・出産・育児,救急

保育園に持っていくものにはすべて名前を書かなければならないのですが、紙オムツにも1枚1枚書かなければなりません。もちろん布オムツの手間を考えればそんなことは大した問題ではありませんが、保育園の個人用の引き出しに切らさないよう用意しておく必要があります。

一昨日の夕食後、少し時間があったのでマジックペンで紙オムツに子どもの名前を書いていました。 その後台所の片付けをしていると、我が家の1歳児がマジックペンを持ってそのへんに落書きをしているのが視界に入りました。油性ペンなので落書きも問題なのですが、さらに大きな問題はキャップが外れているということです。

マジックペン自体はすぐに取り上げたので落書きの被害は微々たるものでしたが、キャップが行方不明!大騒ぎで家中を探し回りました。

小一時間探しても見つからないので、これはどこかでレントゲンを撮ってもらう必要があるという結論に達しつつ、それでも何とか見つからないかと気ばかり焦ってしまいました。当の本人はケラケラ笑いながら元気に家中を闊歩しています。少なくとも気道閉塞はなく、飲み込んだとすれば消化管のどこかにあるはずです。

キャップはプラスチック製であり、尖っていたり腐食したりするものではありません。便に出てくるまで経過観察が基本かなと思いましたが、腸管について考えてみると、1歳児の腸管、特に小腸から大腸に入るところのバウヒン弁を通過可能なのかどうなのか・・・久しく小児の腸管を見ていないので太さの感覚がどうも思い出せず、救急病院を受診したほうがいいのではないかと思いつきました。さっそく電話をかけました。「1才の子どもがマジックペンのキャップを飲み込んだかもしれないんです。」おそらく救急の事務が電話対応してくれましたが、「出るまで待つしかないと思います。小さいのでレントゲンを撮れるかどうかもわかりませんし。」

こちらも自分の不注意のせいと思うと頭が混乱してきました。「プラスチックなんですけど、レントゲンに写ります?それに、子どもの腸管を通過できる大きさなんでしょうか。1歳児のバウヒン弁とか通りますかね?」

バウヒン弁にきのこの傘がはまり込んで腸閉塞になったという症例を知り合いのドクターから聞いたことがあります。きのこがはまるならキャップもはまるかもしれません。バウヒン弁、バウヒン弁と連呼している私に夫が一言、「食道にはまっているってこともあるんじゃない」。

食道にはまっていれば違和感が強くてそんなに機嫌よく遊んでもいられないでしょうが、可能性はあります。上部消化管に停滞している間にカメラで取ったほうがいいのかも、 小腸なんかで詰まったら開腹手術だし、、、さらに色々な雑念が頭をよぎります。

「お待ちいただかなければならないと思いますが、今から来て下さい」

もう寝る時間ですが、そんなことも言っていられません。タクシーを電話で呼び出して、 出かける準備をしました。夫が子どもたちの服を入れているかごをゴソゴソと探しています。

「あった。」

子どもの毛糸の帽子の中にキャップが入っていました。子どもの手の届くところではないのでなぜそんなところに入っているのか経緯はいまだに謎ですが、おそらくはキャップがないと思い込んで焦った私が無意識に床に落ちていた帽子を片付けてしまったのだと思われます(中にキャップが入っているのに気づかずに)。

タクシーと病院を両方キャンセルして一件落着です。親たちが必死で捜し物をしているのに、子どもたちは元気に遊びまわっていました。私はへなへなと脱力してしまいました。

自分が消化管異物に対してあまりにも無知であったことを反省しました。しかも、食道の次はバウヒン弁に行く前に幽門で引っかって胃内に停滞しますね。つまり、引っかかる場所としては食道の生理的狭窄部か幽門かバウヒン弁の3つを考慮すべきでした。

私が研修医の時に救急外来をやっていて、「子どもが玉砂利を鼻の穴に突っ込んだかもしれない」というケースがありました。レントゲンを撮っても映っていなかったので「突っ込んでいなかった」事を示して安心してお帰りいただくことができましたが、「かもしれない」という不確実性な事態に自分が駆りだされることに内心少々苛立ちを感じていました。何じゃそりゃ、それくらい親が見張っているべきではないかと。

今から思えばそれは極めて難しい注文でした。子どもは想定外の行動をとるので玉砂利を鼻の穴に突っ込んだり、マジックペンのキャップを飲み込んだりする可能性があるということです。親の注意力にも限界があり、診察する側としてはそれを受容しなければならないと思い至りました。年を経て、経験しなければ気がつかないこともあるものです。

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