2月 20 2010
かもがわ漢方研究会
本日は第3回かもがわ漢方研究会でした。
愛知医科大学 乳腺・内分泌外科の萬谷京子先生に講演をしていただきました。日本における漢方の歴史や実際に患者さんに処方して好評な処方についてご紹介いただきました。
大建中湯・・開腹術後の腸管麻痺の改善
術後癒着性腸閉塞の改善
機能性の便秘症
半夏瀉心湯・・CPT-11による遅発性下痢
牛車腎気丸・・パクリタキセルによる末梢神経障害
柴苓湯・・肥厚性瘢痕、ケロイド
葛根湯・・腹圧性尿失禁
休憩時間には大建中湯と小青竜湯を試飲しました。大建中湯は今まで患者さんに山のように処方してきましたが、自分では飲む機会がありませんでした。山椒の刺激が結構強く、ぴりりと舌に残りました。煎じ薬なのでエキス剤とは味が違うと思いますが・・・
ディスカッションも盛り上がってとても面白かったです。
理由として
・漢方に懐疑的(否定的)な意見の参加者がいたこと
・社会学の研究者が参加していたこと
・演者の萬谷京子先生のパッションを感じられたこと
などがあると思います。
薬理学的・生理学的に説明できない成分をどう考えるか。
漢方がよいといわれるのならなぜ臨床現場で一般化していないのか。
たとえば、葛根湯に含まれる「エフェドリン」が○○に作用して~という一見科学的な説明も、じゃあどうして最初からエフェドリンを投与しないのですかと聞かれると答えにくいのです。生薬という成分にかなりの幅があるものを投与する時に、薬理効果が証明されている物質以外の成分はどういう役割をはたしているのか(必要な成分なのか、それとも不要なのか?)はまだまだわかりません。
また、患者さんが漢方を服用して、体がどう変わったかということは患者さん本人が一番よくわかっているはずであるという社会学者の意見も貴重です。我々はデータや検査機械に頼りすぎであるという危惧をこころの隅に置いておくべきです。
実際、聴診器の発明が劇的に医療を変えたと言われています。患者医師間に聴診器という検査器具が介在するようになったからです。それまでは基本的に患者さんの訴えと医師が直接五感で感じうることしか所見としてとらえられなかったわけで、聴診器がエコーになり、CTになり、、、、と患者の訴え以上のことが医療の対象に拡大していった大きな転機だったといえます。
さて、今日のディスカッションは海外にアピールするためにははやり西洋医学的な評価の仕方で(数値化など)、漢方の効果を示していかざるを得ないということ、一方で患者さんの訴えを重視し、それをなんとかスケールに落とし込む努力をすべきであるということでまとめられるのではないかと思います。
社会学者の方からは漢方に関しては無理にエビデンスを求めなくともよいのではないかという意見をあとでうかがいました。経験的に効果があるとわかっているという知識の集積に漢方的理論裏付けに医者患者間の信頼関係、社会的な許容度などがかぶさっていると。
QOLの数値化などというのはアメリカ的でなじまないのではないかというお考えのようでした。
この研究会は単に医学的知識を身につけることだけでなく、今後の漢方の展開について議論する場でもあります。演者の情熱と、医療に中立な社会学者と、漢方に否定的な参加者で議論が成立し、盛り上がり、私としてはとても面白く感じました。漢方バンザイという人ばかりでは議論になりませんし、新たな展開に至りません。
我々は日本の医者なので、西洋医学を中心に学びます。漢方もそうですが、いわゆる代替医療というものに対しては、西洋医学に整合性のあるものについては認めうるのですが、整合性を認められないと受け入れがたいものです。
全ての医者が漢方を体系的に学ぶということは現実的ではなく、日々の臨床に際して必要な処方をそろりとやってみる、というのが実際のところかもしれません。
