1月 16 2010
医療社会学概論
医療社会学についてのお勉強を始めました。
医療社会学は、第2次世界大戦後のアメリカにおいてmedical sociologyとして成立し、1950年代に急速に発展した社会学の一分野です。1959年にアメリカ社会学会に医療社会学部会が創設されるに至っております。
1960年代までにヨーロッパ諸国でもやや遅れて同様の発展を遂げていますが、基本的にはアメリカが世界の医療社会学をリードしています。特に、アメリカの著名な社会学者パーソンズが1951年に『社会体系論』において病気と医療を社会と関連付ける理論を明らかにしたことがその後の医療社会学の発展に大きな影響を与えています。
医療社会学にも二つの潮流があります。
医療における社会学(sociology in medicine)
医学・医療の側からの健康・病気の心理社会学的要因や保健・医療の制度や政策への関心に対し、社会学の理論や方法を役立てる傾向にあります。
医療を対象とする社会学(sociology of medicine)
社会学の側の関心やモデルに基づいて健康と医療の世界に入るため、医師・患者関係などの人間・社会関係や、価値・組織・制度・政策などのシステムを対象にする傾向があります。
「医療」+「社会」学なので、どちらの領域からアプローチするかの違いだと思います。私は医者なので医療における社会学のほうの立場になるのでしょう。
医療社会学が扱うテーマとしては、
疫学、精神、身体、社会の相互作用、代替療法、保健医療の提供と社会政策、疾患の独特な社会的分布、病気を生む社会的物的環境、医療従事者の社会組織、医療産業、医療財政、個人の責任と健康、予防医学
など多岐にわたります。
日本では欧米諸国と比較して研究者の層も薄く、研究も少ない状況にあるので、この領域で頑張ればいろいろな業績を生み出すことができるかもしれません。
日本の医学・医療界は閉鎖的で他分野からの参入に拒否的(と思われている)であることや、日本の大学の社会学コースにおいてこのテーマの講義はほとんどないことから社会学の研究者でも医療社会学を目指す人はあまりいないようです。医学・医療のほうからも社会学的な思考・研究手法を学ぶ機会はほとんどありませんので医学・医療界から社会学に手を広げようという人も少なそうです。
私がグローバルCOE「親密圏と公共圏の再編成をめざすアジア拠点」や女性研究者支援センターの方々と京大病院の医師に関する調査研究を始めた際にも、「病院の実情は外からは全くわからないし、手をつけることができなかった」とどなたかに言われたことがあります。閉鎖的に見られているというのは本当かもしれません。
疾患を細かく遺伝子や分子レベルで見るのも必要ですが、社会との関連性という大きな枠組みで疾患をとらえる視点も重要ではないかと考えています。

どの分野の研究も、海外の後追いになることが多いのが、まだまだ日本の現状です。まずは、現在自分たちに課された問題を解決してきた歴史を学ぶために努力するすることは必要です。
しかし、特にこの分野は、自分たちがトップランナーとなるしかない分野ではないかとも思います。頑張りましょう。