2月 11 2009
大建中湯と腸閉塞
本日は大建中湯(だいけんちゅうとう)という漢方薬に関するフォーラムに参加してきました。
一般的には大建中湯とはあまり知られていないかもしれませんが、外科医には大変ありがたい漢方薬です。腸閉塞の患者さんの治療としては、
(1)絶飲食。
(2)鼻から腸管まで長いチューブを入れて貯留した腸液などを吸引し、腸管内の減圧を行う(軽度の場合は胃までのチューブのこともある)。
(3)手術
などと段階を踏んでステップアップしていくわけですが、 (2)のチューブから大建中湯を投与することで、手術に至らずに軽快することが結構あるのです。
今まで、なぜ効くのかは知らないまでも、先輩のドクターに教えられて大建中湯を投与するようになってその効果をしばしば実感していました。
今日のフォーラムではなぜ効くのか、また腸閉塞以外にも効く可能性のある疾患について勉強してきました。
大建中湯は乾姜(ショウガ)と、山椒(サンショウ)、人参(高麗人参)の組み合わせにより薬効を示しますが、なんともシンプルな組み合わせです。漢方薬とはいうものの、日本独自の進化を遂げていて、中国のもともとの処方とは異なり、日本オリジナルとなっているところが興味深いところです。
腸管の血流を増やすこと、腸管内の細菌の悪影響を抑制する(bacterial translocationを抑える)などが今のところ作用点として考えられているというお話でした。
そのほか、肝硬変モデルで肝臓の線維化を抑制するとか、クローン病の再燃を抑制する可能性があるとか、大変興味深い研究結果を聞くこともできました。私自身、放射線による腸管の線維化について実験を重ね、クローン病のマウスモデルも扱ったことがあるものですから、少々興奮してしましました。
漢方薬も、traditional Japanese medicine (Kampo)として世界に発信していくべき時なのでしょう。そのためには欧米でも受け入れられるように、「よくわからないけどとにかく効く」ではなくどういう機序で効くか、ということも併せて示していかなければなりません。
幼い頃のかかりつけ医はよく漢方を処方していました。
葛根湯しか覚えてませんが。
葛根湯は風邪のひき始めには効きますね。
長期間飲む薬ではないようです。
痔には乙字湯、インフルエンザ初期には麻黄湯(子供にはりんごジュース割で)がお勧めです。
花粉症には小青龍湯(眠くなりません)などなどいろいろあります。
ちょっとうさんくさいですが、現実にはよく効きます。
家族や職場の人には喜ばれてます。
子どもというのは何歳くらいから可能なんでしょう?ゼロ歳児も可?
痔に漢方が効くって面白いですよね。うっ血を取るとか、そういうことなんでしょうか。長期間飲み続けるものなんですか?
ゼロ歳でも大丈夫ですが、飲ませるのが大変ですね。
痔にきくものは、大きく分けてうっ血ををとるものと、昇堤作用があるものとがあります。1,2か月の服用でいいみたいですが、その場合再発もあるようです。
ただ漢方は全員にきくわけではないので、その患者にあうものを選ぶのが
なかなか大変です。その確率をいかに上げるかに日々取り組んでいます。