12月 05 2008

乳癌検診学会

Published by at 22:48:29 under 乳癌検診,学会活動

本日名古屋国際会議場で日本乳癌検診学会総会が行われたので参加してきました。名古屋国際会議場というところはしょっちゅう学会が行われるので行き慣れております。

今回は発表をするのではなく、もっぱら聞き役というか勉強しに行ってきました。 
乳癌学会などに比べるとこじんまりとしているというか、地味な学会です。

ランチョンセミナーはお弁当を食べながら講師の先生の講義を聴くものです。
今回は乳癌治療医からみた検診の問題点についてのセミナーを聞いてきました。
いろいろ問題点を挙げておられ、いちいちごもっともと納得することばかりでした。

中でも興味を引いたのは厚生労働省の掲げる「検診受診率を50%に」という目標における「検診受診率」とはどういう定義なのか?という指摘と、ピンクリボン運動などにおけるシンポジウムによる検診受診率アップという効果はあまりないのではないかという意見でした。

確かに、検診受診率は全国平均で12~3%なのですが、これは住民検診のデータであり、職場で受ける検診などはまったく実態が把握されていないために計上できておりません。しかし、職域検診を計上しなければ受診率50%の達成は不可能だと思われます。

また、ピンクリボン運動には私はかなり懐疑的なのですが、特にシンポジウムなどは癌患者が参加することが多く、もともと興味のない人を集める力はないのではないかと講師の先生もおっしゃっておられました。ただし、ウォークイベントのようなものに参加した人の中には乳癌検診未受診者が結構いて、イベントをきっかけに1年以内に受診した人が何割かいたと話しておられました。これは少し意外でした。

次にポスター会場に行っていくつかのポスターを眺めてきました。ピンクリボン運動とはなぜこんなに「トンデモ」なものが多いのか?

札幌では雪祭りのときに「犬のマンモグラフィ」や「ネズミのマンモグラフィ」の雪像を作成したそうです。

京都は京都タワーと市役所と京都府庁をピンクにライトアップしたそうです。

全く意味がわかりません。いくらの経費をかけて何人の受診者増加につながったのか検証していただきたいものです。すくなくともポスターのはそういう検証はされていませんでした。

こういう単発のイベントに私が懐疑的なのは、主催すること自体が目的になってしまって、実際の費用対効果の検証を示していないものがほとんどだと思うからです。

 さて、そのあと、病院の職員を対象とした乳癌検診の取り組みについてのセッションを見に行きました。こういう発表のパターンとしては、「医療関係者の割に受診率が低い」という結果につきます。

また、20歳代、30歳代の受診希望者がかなりいるという話をしていました。20歳代に対して毎年マンモグラフィを受けさせるなどという非科学的なことを医療機関としてあるいは乳癌検診学会として勧奨してはいけないはずだけどなあと思いながら聞いていました。

最後に本日のメインイベント、乳癌検診についてのシンポジウムを聞きに行きました。トップバッターは厚生労働省健康局総務課がん対策推進室長という方でした。

9月の乳癌学会の時に室長代理がしゃべったのと半分以上同じ内容でした。

野球場やビジネス街など人が集まりやすいところで乳癌検診促進のためのイベントを行う、とか、かかりつけ医からの勧奨を進めるなどまたよくわからない案ばかりでした。

まじめに考えているのかかなり心配です。ビジネス街で乳癌検診受診促進のイベントをして、誰がどこの検診を受けに行くというのでしょう?ビジネス街、ということは働く女性に訴えるのでしょうが、働く女性は住民検診を受診する時間がなく(たいてい平日の昼間)、職場の検診に乳癌検診が含まれていなければなかなか受診の機会はありません。まず、職域検診の整備をしろと言いたい!

そういうわけで、質問してきました。数百人の聴衆がいたようですが、一番前の正面の席だったので人目も気にしませんでした。

1)検診受診率50%というのは職域も含めての目標か?

(2)職域の検診の精度管理について今後どのように厚生労働省としては考えているか?

はっきり言って答えはわかって聞いているので意地悪と言えば意地悪ですね。

(1)の答えは「職域も含めて」、ということでしたし、(2)については「現在は職域検診は義務ではないが、今後精度管理については検討課題である」という答えでした。

検診受診率50%を達成するためには職域検診を含めなければならない、しかし職域検診については精度管理どころか実態把握すらされていない。さて、どうやって目標を達成するのか?

職域検診に手をつけざるを得ませんね。その言質をとったということでもう少し突っ込んだ質問もできたのですがその辺で引き下がりました。

(実は厚生労働省にも逃げ道があります。「国民生活基礎調査」という調査で、国民に対して乳癌検診を受診したか聞いてしまえば住民検診も職域検診もいっしょくたにした受診率を計算することができます。たぶんそうやって逃げるつもりなのだろうと思っています)

3 responses so far

コメント(3) “乳癌検診学会”

  1. 久保on 05 12月 2008 at 23:33:49

    今日の学会で、現在の乳癌検診の現状と問題点がよくわかりました。

    問題点に関しては、乳癌検診に長くかかわるプロには、わかってないのかも知れません。

    (1) ピンクリボン運動は、本来重要な活動だと思いますが、そろそろ道をはずれていますね。

    (2) 検診率の向上は、明らかに対象者を見誤っています。

    (3) 癌患者の医療への参加は、そろそろ整備が必要です。若い世代へのしわ寄せを招く危険を感じます。

    しかしながら、やはり乳癌は、もっとも進んだ医療スタイルを持っているのは、間違いありません。完成に向けて、転換期に我々も貢献したいと思いますね。

    私も、いつもの辛らつな質問。。。波紋を投げかけることができたと思います。

  2. 久保on 05 12月 2008 at 23:46:43

    今回の学会で秀逸であった演題!

    「フォーカスグループインタビュー法による乳がん検診未受診者意識調査について」 (大阪がん予防センター)

    未受診者を対象に、少人数(8名)集め、未受診理由をインタビューした報告です。フォーカスグループインタビューという方法論を用いていています。その方法では、表情や仕草までが評価の対象となります。その方法によって、未受診者は、

    「もともと興味がなく、啓蒙によっても、容易に検診に参加することはない。」

    のではないかという結論を導いていました。

  3. EXILEon 06 12月 2008 at 13:50:26

    ピンクの京都タワーの話は面白いのですが
    乳癌検診について知らない人がみたら?でしょうね

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