Archive for 2月, 2011

2月 25 2011

便潜血の意義

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大腸癌の検診としては、まず便潜血というものが侵襲も少なく簡単にできます。ただ問題は、簡単にできるからかえって安易に考えられているところがあるのではないかということです。

実は、便潜血が陽性だという結果をもらっても、かなりの人が精密検査すなわち大腸ファイバーを受けないのです。「自分は痔があるからそのせいだ」と思い込んでしまうのです。

確かに大腸癌の患者数より痔の患者数のほうがはるかに多いのですが、オーバーラップしていることもしばしばあります。すなわち、大腸癌と痔と両方を患っている人もいるということです。

しかし、人はどうしても悪い情報を自分の都合の良い方向へ歪めて受け取ってしまいがちなので、便潜血陽性という事態に大腸癌かもしれないというよりは痔だからという納得の仕方をしてしまうのだと思います。

かなりの進行癌の方で、よくよく話を聞いてみると数年前から会社の検診で便潜血陽性を指摘されていたにもかかわらず放置していた、などということもあります。一度カメラをして痔以外に何もないことを確認すれば良いのに、「大腸のカメラはものすごくしんどい」などというネガティブな話を人から聞いてしまうと、しんどい検査は受けたくないと考えてしまうようです。

今日、私の共同研究者のドクターと話していたのですが、アメリカではそういう検診後の精査に関する基準がはっきりしているそうです。一方で日本は検診の基準はなんとなく曖昧です。

少なくとも50才以上で便潜血陽性であれば大腸ファイバーを一度はやっておいたほうがよさそうです(家族歴があればもっと早くから実施する)。大腸癌は日本でもかなり増えてきましたし、早期に見つかれば治癒も十分可能なのでがん検診の意義は大きいと思います。

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2月 19 2011

動画の扱い

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私は消化管外科の大腸グループに属しておりますが、最近の当科で行う大腸の手術はたいてい腹腔鏡手術です。カメラで撮影しますので、同時に録画もしています。もちろんその扱いについては患者さんの同意を得た上で研究用・教育用に利用されることもあります。

少なくとも手術を担当した外科医にとっては何度も反復して見ることで改善点を見つけることができますし、手術に入らなかった医師にとってもあとで画像を見て勉強することができます。数人の医師で集まってビデオ鑑賞会をしてディスカッションすることも可能です。

ただ、手術は何時間にも及びますので、適宜編集する必要があります。

これが私には難しい作業で、今のところ成功していません。他の先生が編集されたものをいただいたり、未編集の全録画分を流して見たりしています。

こういうのを自由に編集できるようになると手術の流れが頭に入っているということになるのでしょうが・・・録画されたものはハイビジョンであることも多く、ファイルがものすごく大きいのです。Premiere Pro CS4を使っていますが、あっという間にクラッシュして終わってしまうのでなにか方法論的に間違っているのかもしれません。

こういう手術の動画を扱う専門家がいてくれるととても助かるなあといつも考えています。

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2月 11 2011

島根大学での講演と外科医「オオクニヌシノミコト」

3月4日18時より、島根大学医学部附属病院で「勤務継続のための女性医師支援から戦略的女性医師支援へ」という講演をします。

詳細はこちらです。

過分なご紹介で面映いのですが、、、、、

指導的な立場で活躍するための活路をどのように見いだして行くか、については私自身が教えていただきたいというか模索中なので明快な答えを持っていいるわけではありません。
私自身は外科を志したことを後悔していませんが、若い人達に勧められるかどうかといえば、現時点では答えはNoと言わざるを得ません。

でも、面白い分野であることは間違いないので、一緒に苦労してパイオニアになりたいという後輩たちには大いに期待したいと思います。

今週は上の子がインフルエンザで保育園にも病児保育にも行けなくなりました。ワクチンを2回ちゃんと接種していたのですが、ダメなときはダメなんですね。今は下の子にうつっていないか汲々としています。

こんなふうに子どもの急病などもあり、今は仕事を続けるだけでいっぱいいっぱいです。いつかバリバリできる日がくるとも思えません。ただ、今やめてしまえば永遠にそんな日は来ないことだけは確かです。細々とでもそういう可能性を残しておく必要はあると思って何とか続けています。

今年は雪が多いので、島根への道中が気になります。
出雲大社に出向いて外科医「オオクニヌシノミコト」に参拝してこようと思います。

オオクニヌシノミコトは、サメに皮を剥がされた因幡の白兎に、川の水で体を洗って、ガマの穂綿にくるまるよう指示しました。少なくとも、塩水で体を洗って風に吹かれているよりは傷によさそうです。河口近くの川の水なので汽水域で生理食塩水に近い塩分濃度であったと予想されます。

傷の消毒は傷によくありません。海水で洗って風に吹かれるようなものです。創処置としては水道水での洗浄で全く問題はないのですが、生理食塩水のほうが痛みは少ないと言われています。
ガマの花粉は止血剤になるとも言われており、ガマの穂綿はある種の創傷被覆材であったともいえます。カルトスタットのようなものでしょうか。

まあ、詳しいことは私にもよくわかりませんがオオクニヌシノミコトは古事記の時代の外科医と言えましょう。

島根の皆様よろしくお願い致します。

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2月 06 2011

消化器病学会近畿支部教育講演会

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昨日は大阪で消化器病学会近畿支部教育講演会に参加してきました。「消化器病」学会なので基本的には内科のドクターが多いのだと思いますが、消化器病学会専門医取得の要件として外科学会専門医、というのもありますので外科系のドクターもそこそこいると思われます。

子どもたちを保育園に預けた後大急ぎで家の掃除をして布団カバーを全部入れ替えて(土曜日にすることにしています)、京阪電車に飛び乗って出かけました。ほんと、保育園様様です。

大阪に出かけるのは何年ぶり?といった感じなので、ちょっとゆっくりランチを食べて、13時30分からの教育講演会に参加しました。

粒子線の話や、NSAIDs潰瘍、クローン病、肝移植、膵胆道癌の講演でした。朝からバタバタして走りまわってランチをしっかり目に食べた後だったので、午後からの講演は申し訳ありませんが少々眠かったです。しかし、途中で覚醒してクリアな脳になりました。

粒子線治療は線量分布が優れていて切れ味が良く陽子線よりも若干深部までとどくこと、生物学的効果にも優れていてDNA損傷効果が高いという特徴があります。日本では30カ所余りの施設で治療が行われていて、中には民間の施設もあるそうです。

NSAIDsというのは非ステロイド消炎鎮痛薬のことです。最近は虚血性心疾患や脳梗塞などで低容量アスピリン内服中の方も多く、胃潰瘍のみならずカプセル内視鏡で小腸粘膜障害が認められる機会が増えているのだそうです。

クローン病は時々外科としても手術の対象になることがあります。狭窄や内瘻などのためです。ただ、いろいろな薬も出てきているので症例によってはmildな薬から強い薬にボトムアップしていくのではなく、強い薬で積極的に加療して維持療法に持っていくというトップダウン方式もとりうるのではないかというお話でした。炎症が長期間続けばそれだけ線維化も進行します。

肝移植の話をされたのは、実は私が1年目の研修医の時に指導医であった先生でした。昔から肝臓を切る仕事をされていたわけですが、その時は主に肝臓癌の切除でした。指導医の先生は今はさらに移植のほうに進まれ、私はすっかり肝臓から離れてしまいました。同じ消化器系とはいえ、私は消化管のほうが好きなんですね。

膵癌については現時点ではGemcitabineに上乗せ効果があるのはErlotinibという薬だけで(しかも日本では現時点で保険適用ではない)、なかなかGemcitabineを超える薬が出てこないという話でした。膵臓も消化器ですが消化管ではないので普段扱うことがなく、こうして時々勉強しておかないとまったく取り残されてしまいます。また、演者の先生がかなりの野心家であるという雰囲気がひしひしと伝わってきて面白かったです。

まあ、こういう教育集会で女性のドクターが演者になっていることはほとんどありません。今回座長はひとりおられましたが、消化器外科領域では演者も座長もまだひとりも見たことがありません。

消化器病学会では2011年2月1日現在、会員数は31599人でそのうち女性3585人、専門医は17147人で女性は1636人ということです。ちなみに消化器外科学会では男女別の統計を取っていないので内訳は不明とのことですが、2008年に日本外科学会女性外科医支援委員会が行ったアンケート調査によると、日本消化器外科学会の女性医師会員の割合は4%です。多少増えている可能性はありますが20人に1人くらいという私の印象は正しいと思われます。

私はまだまだ勉強不足ですが、いずれはこういう所で皆様に講演する機会をいただけるよう精進したいと思います。まだまだ発展途上です。

帰宅すると18時30分で、すでに夫が子どもたちを保育園に迎えに行って夕食を食べさせ始めているところでした。小さい子どもがいるとこういうお勉強の機会を作るのも実に大変です。「消化器外科」学会はこの春から教育集会がe-learningになりますが、こういう傾向は他の学会にも拡大していくのでしょうか。

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2月 04 2011

日本医事新報

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日本医事新報1月29日号に私どもの法人が紹介されました。

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さすがプロだけあって、こちらの意図を上手にまとめてくださっています。



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2月 01 2011

28日シンポジウムのご報告

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28日の朝はまだ関ヶ原の雪のため東海道新幹線が遅れており、やきもきさせられましたが夕方には定刻通りに運行するようになっていました。

東京出張の病院長は無事に時間内に戻ってくるのか、正直言って不安でした。せっかく病院長のスケジュールを最優先にして決めた日程なので、どうしても新幹線には確実に乗って帰ってきていただかなければなりません。

17時過ぎには病院長以外の演者が揃い、ほぼ定刻通りに開会しました。臨床第一講堂はVOD(何の略かは不明)というシステムが導入されており、会場の様子や接続したパソコンの画面がそのまま録画できるようになっています。 便利なシステムなので利用させていただくことにしました。

まず、医学研究科長の湊長博先生より開会のごあいさつをいただきました。

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次に私の共同研究者である京都大学大学院経済学研究科教授の久本憲夫先生よりワーク・ライフ・バランスをどう捉えるかというお話をいただきました。ワーク・ライフ・バランスのディスカッションをするに当たって、言葉の定義は重要です。また、私は以前先生が「一般的に現在ワーク・ライフ・バランスと言っているのはワーク・ワーク・バランスのことだ」と話しておられたときに目からウロコだったので、これは是非話をしてもらわなければならないと短い時間でしたが是非にとお願いしたのです。

ワーク・ワーク・バランスとは何か? 一般的にワーク・ライフ・バランスというと、仕事と家庭・育児などとのバランスのことを言うことが多いのですが、例えば女性医師が早めに仕事を終えて帰宅したとしても、家で別に自分の好きなことをして遊んでいるわけではなく、家事や育児という別の仕事=ワークをしていることになります。単にどんな仕事をどんな割合でするかという問題だからワーク・ワーク・バランスだという話です。

仕事の途中で抜けて帰ってくることに後ろめたさを感じ、なんとなく疎外感を感じていた私がどんなに慰められたことでしょうか。「途中で家に帰ったからって別に遊んでいるわけではないでしょう?」と。「別の仕事をしているわけだから」 。

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理想論を言えばワーク・ライフ・バランスの「ライフ」は趣味やレジャーなど楽しみのための時間であるべきだというお話で締めくくられました。

次に、京都府医師会勤務医部会幹事長で京都市立病院院長の内藤和世先生より勤務医問題の概要についてご講演をいただきました。明治時代は勤務医の待遇はもっとよく、戦後医師会が開業医の利益を代表するようになっていった結果、勤務医は蚊帳の外となってどんどん環境が悪化して言ったという歴史を教えていただきました。現在の医療制度では医師数を充足させようとすると病院の経営は破綻してしまうのが現状だそうです。

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次に、京大病院の黒沼美恵子副看護部長より、看護職のワーク・ワーク・バランスについて講演してもらいました。看護師の離職については頭を悩ましているところであるということ、育児中の看護師はほとんどが外来勤務であり、育児部分休業を取得し9時16時勤務になっているという現状を紹介されました。病棟業務につき夜勤をこなしている女性看護師はほとんどいないそうです。また、離職については着任後数年以内がほとんどであり、最も理由として多いのは「結婚」です。

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つい意地の悪い質問をしてしまいました。離職の理由として結婚が一番多いという点についてどう思いますかと。 仕事に色々と不満があり、ほかにも理由があるかもしれないが表に出しやすい理由として結婚を挙げているのではないかというお答えでした。実にもっともだと思いましたが、多分女性医師では結婚を理由に離職する人は殆どいないと思うと述べておきました。確かに子どもができると夜の仕事がしにくくなるというのは女性看護師も女性医師も同じだと思いますが。。。配偶者は大人なのですから夜ほうっておいても大丈夫だと思います。

さて、次に京都府立医科大学男女共同参画推進センター副センター長で京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学講師の外園千恵先生より、府立医大に昨年誕生した男女共同参画推進センターの紹介をしていただきました。病児保育を今年立ちあげ、いずれは地域に開放する予定であるという計画を紹介されたので、京大の病児保育の責任者である足立壮一先生からいくつかのsuggestionがありました。私もキャパシティの問題もあると感じましたし、女性医師・女性研究者の利用枠をどう確保するか、どう優先するかについて問題になる可能性があると思いました。京大の病児保育も定員をめぐって熾烈な闘いがあるものですから。私自身昨週月曜日は下の子を、木曜日は上の子を病児保育に送り込んだので、そのやりくりというか駆け引きは身を持って知っています。
しかし、病院関係者ではなくても病児保育を必要としている人はいると思うので、府立医大で病児保育を提供されるということは京都府民として決して悪いことではありません。私も多分利用出来るのでしょう。

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次に真打ち登場です。病院長の講演は30年前に医師の子どもは保育所で預かってもらえないという理不尽な目にあい、共同保育所を立ち上げ、場所がないので自宅まで提供して二人のお子さんを育てながら夫婦ともに医師としてキャリアを継続してこられた経緯をお話いただきました。病院長の夫人は京都市立病院麻酔科部長をされています。お嬢さんは産婦人科医で子育てに奮闘中です。

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京大の病児保育室は、ほかの患者さんとあまり接触せずに(感染症を院内に持ち込まないよう極力動線を離して)すむように外来棟の5階、病院長室の隣にあります。病院長は時間のあるときに病児保育室に自分のお孫さんの様子を見に行ったことがあるのですが、病児保育室のスタッフに「おじいちゃんも京大の職員なんですか?」と聞かれたというお話をされたところ、フロアでは大受けでした。特に看護師さんたちにウケていました。

私は昨年3月に実施した京大病院医師アンケートの結果と12月8日に実施したランチタイムカンファランス「女性医師のキャリアプランを考える」 の報告をしました。プレゼンを始めた時点で20時を過ぎていたので、頭の中は結構時間のことでいっぱいになっていました。もう少し時間があったほうが良かったかもしれません。

アンケート結果についてはHPに単純集計をすべてアップしているのでそれを参照してもらうことにして、簡単に流しました。

ランチタイムカンファランスについては、ディスカッションの中で示唆的なところをいくつかピックアップして紹介しました。例えば、女性医師が当直に入れないのは、朝から働いて夕方から当直に入り、翌朝も普通にそのまま働いてまた夕方まで拘束される長時間連続労働であるからだということを挙げました。もし、夕方来て翌朝帰れるのなら、いろいろやりくりは必要だし回数は少ないかもしれないが女性医師も当直可能になる場合も多いのではないかと。

この話は私にとっても実に示唆的であり、水曜日の18時からの術前カンファランスに全く出席していなかった私も、水曜日を研究日として勤務せず、夕食の準備などをしておいて夫やベビーシッターに子どもたちを見てもらって自分は18時から1~2時間のカンファランスにピンポイントで出席して終わればそのまま帰ってくるという方式を取ることにしました。そして、毎週参加しようとすると無理が出るので現時点では2週に1回程度の参加としています。

こうして考えると、女性医師の知恵や工夫を集積することにはとても意味があるのではないかと言えます。

そこで、我々は様々な女性医師にインタビューをして撮影し、動画を集めて公開していこうと考えており、そのプロジェクトについて紹介しました。

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自分の報告が終わると20時30分近くになっており、もう頭の中は閉会モードになっていました。大変失礼なことに閉会のごあいさつをお願いしていた京都大学女性研究者支援センター女性研究者支援推進室長・京都大学グローバルCOE「親密圏と公共圏の再編成をめざすアジア拠点」事務局長の伊藤公雄先生のことをすっかり忘れて閉会しそうになってしまいました。 伊藤先生が自主的に出てきてご挨拶をしてくださったので助かりました。

3時間の長丁場、とても疲れました。でも80人くらいの参加があり、看護師さんもたくさん来てくれたのでとても良かったです。

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