抗加齢医学会総会に参加してきました。
食で老化の予防は可能か?という白澤卓二先生のお話のちょうど途中から聞くことができました。
カロリーリストリクション(カロリー制限)により、老化予防が可能であるという話は以前講習会でも聞いたことがあります。(白澤先生とはその時に名刺交換をさせていただいたのですが、たぶん先生は私のことは全く憶えていないでしょう。)また、細胞が分裂するにつれてテロメアが短縮していくのですが、それをレスベラトールがサーチュインを活性化することで抑制するという話題でした。
レスベラトールはブドウの皮に多く含まれているので、赤ワインが健康にいいというのはこの点からもある程度説明がつきます。(ただし、アルコールも過量になると特に女性では癌のリスクが高くなるので要注意ですが。)
また、白人女性を対象にした研究でテロメアが1年に27bpずつ短くなっていくこと、 肥満女性は240bp平均で短いということ、1パック/ 日×年の喫煙でさらに5bpずつ短くなるというランセットの論文を紹介されました。つまり加齢によりテロメアが短くなっていくこと、肥満と喫煙でさらに短くなる(加齢が進行する)ことがわかります。
また、先生自身がマクロビのレストランをプロデュースされているのですが、すべての食材を無農薬、有機のものにしようとしてどんなに努力しても無理で、95%位にとどまっているという裏話(?)も聞くことができました。我々が普通に近所のスーパーで買物をしているのでは、農薬や添加物がたくさん含まれたものしか食べられないでしょうと。
現実は厳しいです。
14時から専門医試験があるので、そのあと少し勉強をしてからランチョンセミナーに行きました。例の楽しみにしていた抗加齢弁当です。

今までのあちこちのランチョンセミナーのお弁当の中 では最も健康的だったと思います。一番高くついてるんではないでしょうか。ただし、あまりお腹がふくれた感じがしません・・・カロリーリストリクションは厳しいです。

ランチョンセミナーはプラセンタ療法の話でしたが、これは全く面白くありませんでした。最初の演者はこれから自分たちが研究していきたいのであまり詳細を語りたくないと言う冗談か本気かわからないことを言うし、2番目の演者は時間が押しているせいもあってスライドを飛ばし飛ばしで内容が全く良くわかりませんでした。また、更年期障害の患者さんで癌などのためにホルモン補充療法ができない場合にプラセンタ療法を用いる可能性を考えているが、プラセンタにより癌が進行することを心配しなくてもよいか、というような質問に対して、「自分の父親がクリニックで30年以上プラセンタ療法をやっているが、癌患者で癌が進行したということはない」と返答していました。それってあんまり科学的な答えではないし、理論的に考えれば、さまざまなサイトカインや成長因子が含まれているプラセンタが癌を進行させる可能性はやっぱり否定出来ないのではないかと思ってしまいました。
プラセンタっていえば聞こえはいいですが、「胎盤」ですからね。ヒト由来の製剤である以上感染症のリスクとか完全に避けられるものなのか、この辺は私も情報不足です。
自分の胎盤を冷凍保存しておくというのがいいのではないか?と思っています。自分の胎盤ならアレルギーや感染のリスクはコンタミでもない限りクリアできます。胎盤は胎児側の組織ですから子どもの将来のために取っておく、という親の判断で。
その後試験勉強をしようかとも思ったのですが、せっかく学会に来たので話を聞くべし、と思い、ビタミンD話を聞きに行きました。ビタミンDは食事からの供給と紫外線(UVB)によって皮膚で合成されるものとふたつの経路があるのですが、なかなか食事からでは不十分だといわれています。
ビタミンDはカルシウムの吸収に重要であるのみならず、欠乏すると多発性硬化症、I型糖尿病、大腸癌、乳癌の発生頻度が増えると報告されています。
皮膚のアンチエイジングのためには紫外線を避ける方が良いのですが、ビタミンDのためには紫外線をある程度浴びる必要があるというジレンマがあるわけです。
特に若い女性は紫外線を避ける傾向にあるし、ビタミンDは母乳に移行しにくいので母乳栄養児は完全にビタミンD欠乏の状態にあるというデータが示されました。
夏から秋に生まれた赤ちゃんは比較的ビタミンDが充足しているのですが、冬生まれだと不足しがちになるということも示されました。
一番良いのは紫外線を避けつつビタミンDを経口摂取することなのですが、日本では残念ながら安全なビタミンD製剤(医薬品)がない(活性型ビタミンDは過剰になると腎石灰化などの副作用がある)ので、サプリメントをとるしかないのです。サプリメントは医薬品ではありませんから、やはり医師としては信頼しきれないところがあります。
時間を割いて聞いた価値があると思える話だったので満足しました。
そして試験に望みました。問題は全部で100問で、時間は120分でした。
問題は回収されてしまったので正確なことは言えませんが、テキストのセルフアセスメント問題と会報についてくる問題をやっておけば8割は取れると思いました。私はちょっと勉強不足だったので微妙なラインです。
抗加齢医学会というと私の専門分野である消化器外科、今は特に大腸グループなので大腸外科と関係ないように思われるかもしれませんが、しっかり試験に出ていました。正確な文章ではありませんが、例えばこんな感じでした。
間違っているものを選べ。
a. 大腸癌の死亡率は年々増加している
b. 女性の方が男性よりも死亡率が高い
c. 大腸癌は粘膜から発生する
d. 粘膜癌でも転移をする
e. 直腸癌よりも盲腸癌の方が症状が出にくい
さすがにc, d, eはすぐに分かりましたけど、a, bはどうだったかな~としばらく考えてしまいました。答えは多分bだと思うのですが、、、
運動によりリスクが減るものを選べ。
a. 結腸癌
b. 胃癌
c. 膵臓癌
・・・・・・・と消化器系の癌が続いていたのですが、これは結腸癌で決め打ちです。運動でそのリスクを下げることが確実といわれているのは結腸癌だけです。意外とエビデンスのある癌予防はないのです。(もう一つ確実なのは乳癌に対する授乳、です。)可能性が高いといわれているものはほかにも幾つかありますが、確実、というエビデンスレベルの高いものはテキストによればこの二つです。
しかし、糖尿病の診断基準とか、正常圧緑内障のこととか、専門外で勉強不足だった分野は難しくてわかりませんでした。何点で合格なのかわからないのでかなり不安です。
アンチエイジングも「病的な老化を防ぎ、健康長寿を達成する」という目的で可能な限り科学的根拠に基づくのであれば大いに進めて良いと思っています。従って、怪しげな健康情報、健康食品に惑わされないように勉強することは必要です。また、「癌になってから治療をする」立場の外科医ではありますが、癌になりにくい生活を指導・提案してもよいと思います。
短い時間でしたが満足して帰ってきました。 来年も京都で開催されるので、また参加したいと思います。