Archive for the '放射線について' Category

5月 01 2011

郡山の校庭の表土除去について

Published by under 放射線について

福島県郡山市が、放射線対策として独自に小中学校の校庭などの表土を取り除くことを決定し、作業を行いました。その結果、表土を除く前の放射線量は1時間あたり3.2マイクロシーベルトもあったのに、それが0.6マイクロシーベルトに減ったといいます。素晴らしいと思います。

実は、福島県郡山市は私が幼稚園から小学校5年生までを過ごした土地です。他人ごとではありません。私の通った幼稚園や小学校の名前を報道で見つけることはできませんでしたが、子どもたちの被爆量を少しでも減らすために市が独自に動いたことは本当に良いことだと思います。そもそも国が動いてくれないなら、地方自治体が動かないと仕方がありません。

一方で、文部科学大臣の高木氏は、「事実関係を確認したいと」か、ほかの地域にある学校での表土除去の必要性について「その都度放射線量を計測して、基準以下であれば必要はない」と述べて横槍を入れています。
基準値以下であったとしても、自分の郷土の子どもたちの被爆量を少しでも減らそうとする人たちの気持ちを考えたらそんなことは言えないと思います。

文部科学省が屋外活動制限の可否を判断するのに「年20ミリシーベルト」と、一般人の年間許容限度の20倍という高さの被ばく線量を目安としたことで、内閣官房参与:小佐古敏荘氏の抗議の辞任にも発展しています。

年間20ミリシーベルトは私の感覚でもべらぼうな値です。前にも書いたとおり、我々放射線業務を行う医師でさえ、業務で年間1ミリシーベルトを超えることはほとんどありません。さらに、我々はすでに成人しており、線量を管理され、採血により白血球数を測定し、業務としてお金をもらって自分の判断で放射線を取り扱っています。子どもたちは放射線の感受性も強いですし、線量を管理されているわけでもなく、自分の判断で放射線を浴びているわけでもありません。子どもの健康は大人が守る義務があります。

福島県の小中学校などでの屋外活動を制限する放射線量として「年間の積算放射線量20ミリシーベルト」との目安を基に「屋外で毎時3・8マイクロシーベルト」と決められたのはあまりに緩すぎると思います。なぜなら、これも外部被曝量だけの話なので、実際には呼吸による被曝、食物からの被曝を考慮すると、2倍程度の被曝になると考えられるからです。

郡山市が率先して表土の除去に踏み切ったこと、私は誇らしく思います。ただ、表土の捨てるところがなく、校庭の一角に集めて凝固剤で固めてブルーシートをかけたという点でひとこと。

表土は国会議事堂に持ち込んではいかがでしょうか。皆さん安全だとおっしゃっていますので。

2 responses so far

4月 27 2011

放射線に関する講習会

Published by under 放射線について

放射線や放射性同位元素を取り扱う医師に対する講習会というものがあります。私は大学院時代に実験でガンマ線を取り扱っていたこともあり、その実験に先駆けて丸一日かけて講習会に参加したのですが、今回は再教育という扱いになり一時間の講習会の受講ですみました。

医療従事者の被曝線量は平均1ミリシーベルト/年以下だという話を聞いて、私が思っていたよりずっと少なくてちょっと驚きました。

(ちなみに、先日福島県立医科大学での外気放射線量のリアルタイム計測値をご紹介しましたが、今日4月27日午後17時20分現在、0.55マイクロシーベルトです。1日だと0.55×24=13.2マイクロシーベルトになります。100日で1.32ミリシーベルトです。)

いつもだと少々退屈な気もする講習会でしたが、今回は原子力発電所の事故のあとでもあり放射線の管理や被曝線量については興味を持って聞くことができました。

重要な点は、なるべく被曝量を少なくしなければならないということです。

放射線の人体への影響は、「確定的影響」と「確率的影響」の2つに分けけることができます。

確定的影響というのは、一定の線量(しきい値)以下では障害が起きないのですが、それ以上の線量を被曝すると生じる影響のことです。脱毛や皮膚障害、骨髄障害などがあります。

確率的影響というのは、発癌など発生確率が被ばく線量に比例すると考えられているもののことです。

講習会でも確率的影響については低線量でも影響があるので、なるべく被曝量を少なくすることを強調されました。

No responses yet

4月 19 2011

福島第一原発の行方

Published by under 放射線について

福島第一原発の工程表が発表されました。少し見通しがたったような気がします。少なくとも大爆発を起こすようなことはあまり心配しなくても良いのでしょう。

東京電力のHPから、動画や写真がダウンロードできます。昨日の時点では英語版では見ることができるのに日本語版では見ることができないとネットで評判になっていましたが、 今日見ると日本語のページでも見ることができるようになっています。

私は外科医であり、放射線の専門家ではありません。ただ、大学院時代は放射線腸炎の研究をしており、マウスや細胞にガンマ線を照射する実験を延々と行なっていました。大学院生の実験なので、そう何年間も観察し続けることはできず(在学中に論文を完成させなければならないので)、試行錯誤を繰り返し、ガンマ線を腹部に照射して20週とか24週でマウスの腸管を観察するという方法をとっていました。線量も、低線量から高線量までいろいろ試しました。

また、今日も透視下の処置をしましたが医療従事者として日常的に放射線を浴びています。もちろんこれはガラスバッジで線量を管理することになっています。

したがって、放射線とか放射能というものがどんなに微量であっても有害であるという考えでいるわけではありません。そもそも生体はある程度のストレスには耐えられるようにできており、場合によっては適度なストレスがその生体をより強化する(トレーニング負荷により身体能力が向上する、というように)こともあり得ると思います。

ただ、妊婦や赤ちゃん、小さい子どもへの影響はよくわかりません。また、現地の住民の方々が実際にどれくらいの放射線を浴びているのかを把握するために、ガラスバッチを配布されているわけではなさそうです。つまり、私は現地の放射線が住民の方々にとってどの程度危険なのかどうか判断する基準を持ちません。

また、内部被曝のことも問題になっています。実は、3月11日以降、出荷制限になる前に、食材の宅配サービスで送られてきた北関東産のほうれん草をちょっと悩みつつ、綺麗に洗って食べてしまいました(その後出荷制限で関東のお野菜は来なくなりました。また最近制限解除になったようです)。しかし、一回くらいはいいとしても、うちは小さい子どもがいるので日常的に福島第一原発の近くの野菜や牛乳を敢えて購入したいとは思いません。

生産者の方々には大変申し訳無く思います。もちろん生産者の方々は被害者であり、何の落ち度もなく、せっかく作ったものを何とかしたいというお気持ちは想像するに余りあります。絶望のあまり自殺された農家の方もおられます。本当に申し訳ないです。しかし、普段から低農薬とか無農薬とか有機とかなるべく安全な野菜を、と考えているのに基準値以下だからといって放射性物質がついたものをわざわざ食べる気にはなれません。

したがって、国民全体の健康を守るという観点から国が出荷制限をすることはやむを得ないと思います。おこってしまった原発事故の被害を拡大しないために、そして現地の農業を守るために、国は信頼性を揺るがすようなことをしてはならないのです。

しかし、今回、野菜などの放射線量を測定するのによく洗ってから測定することになっているのだそうです。それでは意味が無いと思います。今までの厳しい基準値のまま、今までの測定法のまま、それでも安全であるものだけ出荷することで信頼を維持できるのであって、どさくさにまぎれていろいろな基準をいい加減に緩めてはならなかったのです。

国の方針は間違っています。中途半端に安全宣言を出してもかえって不信感を生むだけです。ちゃんと洗浄前の野菜の放射線量を測定して判断し、農家の方や自治体などから要望があっても(申し訳ないけれども)、基準値を越えるものは一切出荷させないという方針をとるべきだと思います。国は悪者になっても、国民の安全と生活を守らなければなりません。そのかわり、お金で保証するべきです。消費者を騙すようなことをするとかならずしっぺ返しが来ると思います。

指導者たるもの、悪者になることを恐れてはなりません。

一方で、つくば市が福島第一原発の事故で福島県から避難して転入する人たちに、放射能汚染の有無を確認する検査を受けた証明書の提示を求めていたなどという馬鹿馬鹿しい話もあります。放射性物質が付着するような環境におられたとしても、着替えてシャワーを浴びてしまえばよい話です。福島県からの転入者に対する子どものいじめなどの話も聞きましたが、放射線(放射能?)がうつるとか非科学的なことを周囲の大人が言っているのでしょうか。

我々は原子力とか放射線についてもっと一般教養として勉強する機会を持つべきでした。原子力発電所が本当に安全なのかとかそもそも本当に必要なのかとかそういう議論をすることなく現在まできてしまいました。国や電力会社に安全です、安全ですと言われて「そうなのか」と思っていただけで、本当に安全なのかどうか検証していませんでした。根拠のない希望的観測も何度も聞かされると既成事実のようになるものです。

医療や生物を扱う人と、原子力や物理を扱う人ではかなり原発事故後の放射線(放射能)に対する発言傾向が違うと言われています(前者はやや楽観的、後者はやや悲観的な傾向があるということです)。この大きな溝を埋めて、さらなるディスカッションが必要だと思います。

個人的な考えを言えば、やはりこの便利な生活を支える電力を確保するためには原子力発電所は必要なのかもしれないと思います。ただ、今回その安全対策がかなりお粗末であったということが露呈しました。また、「絶対安全」というお題目のもとに事故が起こったときの対策というかシミュレーションをしていなかったのではないかと思います(たとえば、冷却用の海水を空からヘリで撒くなんて、ミッションに参加された方は命がけなのにその効果はどうみても焼け石に水という印象を否めませんでした)。周辺住民の避難もしかりです。事故が起こったらどの範囲の住民をどのタイミングでどれくらいの期間避難させるか、など全く考えていなかったのでしょう。

どの問題にしろ(我々の領域である医療にしろ)、日本人は議論することなく、勉強することなく、リスクとベネフィットを天秤にかけて判断を下すということを避けて生きてきたのだと思います。自分が悪者になりたくないという心理なのでしょうか。

この震災は我々日本人の生き方、問題に対処するアプローチの仕方を一変させる一大転機になるのではないかと感じています(また、そうしなければならないと思っています)。

No responses yet

4月 06 2011

放射性物質のゆくえ

Published by under 放射線について

福島原発の問題は長期化の様相を呈しています。また、その影響の範囲も拡大しつつあります。私は専門家ではないので、どの情報が正しいのかはよくわかりません。

ただ、ドイツ気象台が公開してくれている放射性物質の飛散予測と、日本の文部科学省が公開している各地の放射線量については時々チェックしています。

ドイツのデータによると、今日あたり西日本にも汚染が拡大する見通しでしたが、風向きが西風に変わったため大丈夫だったようです。

また、文科省のデータでは今のところ西日本の放射線量に変化はありません。茨城、東京、神奈川、静岡あたりまでは3月15日あたりで放射線量が増加しているので、3月15日の水素爆発の影響が静岡あたりまではあったのだと私は推測しています。

また、福島県立医科大学の外気放射線量リアルタイム計測値はこちらです。
4月6日22時現在、0.6マイクロシーベルト/時前後で推移していますので1日で14.4マイクロシーベルトということになります。胃透視1回が600マイクロシーベルト、CT1回が6900マイクロシーベルトだそうです。41.7日で胃透視1回分、497.2日でCT1回分にあたります。ただし、食事や呼吸などで体内に入る分もありますので、実際の1日あたりの線量はもっと多くなるでしょう。

神経質になっても仕方がありませんが、被曝量は少しでも減らしたほうがいいのである程度の予測が可能なのであればそれに沿って行動するのは間違っていないと思います(特に妊婦、子ども)。汚染物質を避けて外出を控える、マスクをする程度の対策でよいでしょう。

私たちは診療のために放射線を使って被曝しています。したがって、ガラスバッチをつけて線量をモニタリングすることになっています。原発近くの住民の方々にもガラスバッチをつけてモニタリングしていただいたらいいと思います。ある一定の線量を超えたら◯◯キロメートル圏外に出るよう勧告する、とかすれば安心だと思いますが、やはり人の数が多すぎて難しいのでしょうか。

No responses yet