Archive for the '外傷' Category

12月 26 2010

低温熱傷

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NHKの番組で着ることができる毛布というのが紹介されていたので、ついAmzonで購入してしまいました。我が家は小さい子どもがいて危ないので石油ファンヒーターやガスストーブなど効率よく暖かくなるものを使用していません。エアコンと部分的な電気マットだけなので、夜、事務作業をしているととても寒いからです。

フリースのガウンのようなもので、腰から下に関しては電気毛布になっているという構造です。

温かいには温かいのですが、これはヘタをすると低温熱傷になると思いました。温度の感覚が落ちている人(高齢者など)には全く勧められません。こまめに姿勢を変えないと臀部の椅子との接触面が熱いです。

どんな暖房器具にも多かれ少なかれ熱傷のリスクはあるので仕方のないことですが、低温熱傷の恐ろしさは本人が熱いと感じなくても生じることと、低温でこんがりと熱が加わっているためか思いのほか深い熱傷(Ⅲ度熱傷)になるところでしょう。いわゆる携帯式の使い捨てカイロの貼るタイプのものでも低温熱傷がときどき起こります。

治療といえば適切なデブリドメン(壊死組織を除去する)をして適切な創傷被覆材を貼付することですが、しばしば追加のデブリドメンを必要とするので患者さんに最初に十分説明しておかないと、ヤブ医者のように思われるリスクがあります。

私は熱傷とか褥創の治療をするのがとか割と好きなので、デブリも全く苦になりません。必要に応じてさくさく切らせていただきます。デブリのコツは出血するちょっと手前でやめるということです。昔は褥創でも出血するまでデブリするように指導された記憶がありますが、入院中ならともかく帰宅後に出血を見れば患者さんはやはりいい気持ちがしません。入院中であっても、以前褥創のデブリをしていて、予想外の動脈性出血をきたし刺通結紮や電気メスでの焼灼を要したことがあります。

少々残った壊死組織程度であれば自己融解します。(もちろん、必要に応じて電気メスなどの準備をしてでも積極的にデブリを行うこともあります。 )

適切な湿潤療法を行えばかなり広範囲の熱傷でも植皮が必要になることはほとんどないと思います。ただ、熱傷に治癒に際しては深さが重要で、Ⅱ度熱傷では毛根から上皮再生が始まるために早期に治癒しますが、Ⅲ度熱傷では毛根が残っていないので肉芽収縮と周囲の皮膚からの皮膚再生しか治癒が得られないのです。

電気毛布も、貼るタイプの携帯式カイロも、着る毛布も、手軽で温かい便利な暖房器具ではありますが、低温熱傷には皆様十分にお気をつけください。私も自分のおしりの処置はできないので、温度管理に十分気をつけて着る毛布を活用して夜間の活動を行うことにします。

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2月 18 2009

お酒と頭部打撲の思い出

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夜間当直をしていると、お酒がらみの頭部打撲の患者さんを診ることがあります。
酔っぱらってふらふら歩いていて転んだ。酔っぱらってご機嫌でろれつが回らない。

・・・・・出血は大したことはないけれど、内服薬を確認したら抗凝固剤(血が固まりにくくなる薬)を飲んでいるということなので早速CTをとると、 案の定頭蓋骨の内側に少量の血腫を発見。脳外科に連絡し入院してもらいました。

体の外側の出血より、見えないところの出血が怖いという研修医時代のチューベン(オーベンとチューベンの中間医、つまり指導医と研修医の中間くらいの医者)の教えが身にしみついております。

酔っぱらって路面電車に飛び移ろうとして失敗して線路に後頭部を打撲し、裂傷からかなりの出血を認める。

・・・・・あ~それはまたチャレンジングなことで。CTで一応頭蓋内に出血がないことを確認して縫合処置。首から上は血流が豊富なので外傷も派手に出血してびっくりしますが、逆に治りも早いものです。

酔っぱらって「先生美人だね~」などとセクハラ発言を連発するのに適当に返事しつつ縫合。数十針の大手術(?)となりましたがご本人は美人医師の処置にご満悦でした。

仕事帰りに車を運転中、逆走してきた高級外車と正面衝突。相手の運転手は飲酒運転で、反対車線を走っていたパトカーに飲酒運転がばれるのが怖くて逆走してきたという恐ろしい話。小型の国産車で外車と正面衝突して負けてしまった(相手はほとんど怪我がない)そうです。

・・・・・全身の打撲で足や腰や胸骨や顎などの骨折に加えて腹部の打撲による腹腔内出血が見つかり、整形外科を経て外科に。頭部打撲の影響かまた別の原因か翌々日脳梗塞が発覚し、踏んだり蹴ったりの気の毒な患者さんでした。

よくよく考えると、夜間の救急は酔っぱらいがらみの外傷が多かったような気がします(3例目の患者さんは被害者ですけど相手が飲酒運転)。印象に残っているだけなのかもしれませんが・・・ただ、酔っている患者さんは受け答えがおかしくても、酔っぱらっておかしいのか、頭を打っておかしいのかなかなか判断しにくいので要注意です。

日本は酒のみに寛容なのでしょう。私もお酒は好きですが機会飲酒ですから飲まなくても別にストレスはありません。

先日外国で酔態をさらした大臣がおられましたが、本人も気をつけるべきですが(自分が酔った時どんな状態なのかは知っておいたほうが良い)、わざわざ酔っぱらっている時に記者会見をさせなくても・・・記者さんたちも周りの人たちも不親切だなあとふと思いました。

アルコール摂取も適量であれば健康に良いと言われますから、へべれけにならない程度に正しく美しくたしなむのが良いと思います。

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10月 31 2008

外傷の湿潤療法

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外傷はまず「洗浄する」「消毒しない」「乾燥させない」

すりむき傷などの傷に対して以前は消毒をしてガーゼを当てるという処置が一般的でしたが、ガーゼは乾燥して傷にこびりつき、はがすときは痛いし、再度出血するようなこともあります。最近、外傷はまず水道水または生理食塩水でよく洗浄し、傷を乾燥させないような創傷被覆材を貼るという湿潤療法が一般的になりつつあります。

なぜ洗浄するのか

まず、傷が汚れていると細菌の温床になりますから、化膿するリスクが高まります。砂などが入ったままだと刺青のように黒く後々まで色が残る原因になります。水道水などの流水で物理的に汚れを洗い流し、細菌の絶対数を減らすというのがまずは重要なことです。

なぜ消毒をしないのか

消毒薬は確かに細菌にも作用しますが、ヒトの細胞にも作用します。細菌よりヒトの細胞の方が弱いので、傷を治そうとする細胞に大きなダメージを与えてしまうのです。一方、いくら消毒しても細菌数はゼロにはなりませんし、時間がたてばまた増えていきます。それよりは水で洗ってやれば、ヒトの細胞にあまりダメージを与えずに細菌数を限りなく減らすことができます。また、消毒よりは洗浄のほうが痛みもはるかに少ないのです。傷をぬらすと化膿するというのは日本だけの迷信のようです。もちろん汚染された水はいけませんが、日本の水道水はたいへん質がよいので細菌はほとんどゼロに近いと考えてよいでしょう。

なぜ乾燥させないのか

細胞が増えるためには水分や 栄養、成長因子のように細胞を刺激して成長を促すような物質が必要です。傷口が一見ジュクジュクとしてみえるのは、浸出液といってそういった水分や栄養、成長因子などを含んだ液体が組織から出てきているからです。ガーゼを貼って傷が乾いてしまったらこの大事な液体が細胞に作用することができませんから、細胞の増殖が妨げられ、傷の治りが遅くなります。このことは、ヒトの細胞培養をするときに乾燥させると死滅することでも明らかです。傷を乾燥させないために傷に貼るもの(創傷被覆材)として、医療用のもの、薬局などで市販されているものがいくつかあります。

創傷被覆財の種類

(1)薬局などで市販されているもの

  ニチバン:ケアリーヴ バイオパッド

  ジョンソン・エンド・ジョンソン:キズパワーパッド 

  などがありますが、私は使用したことがないので使い勝手などはよくわかりません。

(2)医療用のもの

  医療用のものは多種多様ですが、そうそう何種類も用意できるものでもありません。
  私の使い分けとしては、

  受傷当日など出血があるとき
  アルギン酸塩被覆材(カルトスタット:Convatecなど)。
  スライサーなどで指先を削ぐようにできた傷の止血にも使います。
  これらの上から透明のフィルムドレッシングを貼ります。

  浅めの皮膚欠損で浸出液が少ないとき
  ハイドロコロイド・ドレッシング材(デュオアクティブET:Convatecなど)。
  デュオアクティブのシリーズの薄いもので、色も目立ちません。
  指などの曲がったところにもなじんで貼りやすいのが便利です。

  深い傷で浸出液が多いとき
  ウレタンフォーム・ドレッシング材(ハイドロサイト:Smith & Nephewなど)。
  浸出液を吸収しながらも創に固着しない被覆材。
  浸出液が減って創が浅くなってきたら適宜デュオアクティブETなどに切り替えます。

(3)医薬品ではないもの
  食品用ラップを創の被覆に用いることがあります。
  しかし、これは目的外使用になるので医師の指導のもとに行うべきだと思います。
  褥創(とこずれ)の処置には威力を発揮します。

注意すべきこと 

どんな医薬品、治療法にも注意すべきことはあります。咬傷(ヒト、猫、犬にかまれた傷)、深い傷、何かに挟まれたなど圧力を受けた傷、すねの前面の傷は特に化膿しやすいので要注意です。一般に小さな子どもは大人より傷が化膿しやすいようです。 

創傷被覆材を長期間貼っていると、浸出液の刺激で周囲の皮膚がかぶれることがあるので1日1回はがして傷を洗って貼り替えることをおすすめします。

治った後は色素沈着しやすいので、露出部位であれば紫外線対策を怠らないようにしましょう。半年くらいは気をつけたほうがよいと思います。

上記内容については別冊PHP2007年11月号に 私のコラムが掲載されています。

なお、夏井 睦(なつい まこと)先生の新しい創傷治療というホームページにはさらに詳しい説明や症例提示がありますので参考にしてください。

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