Archive for the '学会活動' Category

4月 15 2012

外科学会リベンジ

12日、千葉の幕張メッセで開催された日本外科学会総会に出席してきました。諸般の都合により、日帰り弾丸ツアーとなりました。
昨年は震災の影響で紙上開催、すなわち総会中止になったわけですが、今年は通常通りの開催となりました。
特別企画2「女性外科医の労働環境の改善に向けて」というシンポジウムで「女性外科医の継続的なキャリアアップを目指して」というテーマでプレゼンしてきました。仕事のほうでもここしばらく時間外が多く、プライベートでも子どもたちの夜泣きや中耳炎や喘息のために時間を取られて準備不足の感は否めず、行きの新幹線の中でも東京に到着する寸前まで修正を試みました。そんなことではプレゼンそのものの練習をする余裕は全くなく、時間に追われた講演になってしまったのではないかと反省しております。

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それでも、女性医師VOICEの内容を少し公開し、宣伝できたのではないかと思います。
千葉大の社会医学系の先生がそれぞれの演者に質問をされていたのが印象的でした。お近づきになりたいと思いましたが、ディスカッションが終わったあとお見かけすることができませんでした。

そのほか、細径鉗子に関するランチョンセミナーに参加しました。細径鉗子とはconventionalな腹腔鏡手術に用いるより細い2mmとか3mmの鉗子のことです。より傷がちいさくなりますが、器具の耐久性や剛性に問題が生じます。

鉗子メーカーのブースで腸鉗子の片手での操作についてちょっとしたコツを教わってきました。これはこの学会における最大の収穫かもしれません。私は手が小さいので(特別小さいというわけではなく、平均的な日本人女性の手の大きさと思いますが、外科医としては小さい方でしょう。)、鉗子や各種デバイスの扱いにはやや困難を感じます。

帰りは学会会場で買った本を読みながら、牛タン弁当とビールで少しのんびりできました。子連れだとこうはいきません。最近、学会会場に託児所が設置されることが増えてきましたがそもそも子連れでの移動ってよけい大変だと思います。子連れではコンピューターの持ち運びもできませんし、スーツで移動もまず無理です。

帰宅は22時30分で、すでに子どもたちは就寝していました。

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12月 09 2011

内視鏡外科学会

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大阪国際会議場で開催された内視鏡外科学会に行ってきました。朝7時45分からのセッションで発表することになっていたので、早朝5時起きで京阪電車に揺られて行きました。朝の電車の寒いこと、寒いこと。ちょうど冷え込みがきつくなった朝のことで、節電のためか暖房が効かず、寒い思いをしました。

私は「ポートの細径化と低侵襲性」というワークショップで発表することになっていました。通常、私の施設では12mmのカメラポート、5mm×2ポート+12mm× 2ポートで大腸癌手術をしています。近年、さらなる低侵襲化を求めて、いくつかの方向性が模索されています。

そのひとつの流れとして、ポートの径をさらに細くしてより低侵襲な(患者さんにやさしい 、という言い方で表現されることが多いです)手術を目指せるか、というテーマでディスカッションするというのが今回のセッションの目的です。

ただ、低侵襲であるということの証明は意外と難しいのです。傷が小さくて整容性に優れているということは感覚的にわかると思いますが、12mmの傷と5mmの傷が3mmと5mmになることでどの程度全身に与える侵襲を軽減できるか、と考えてみると、やっぱり微妙な気がします。

また、その侵襲の程度を比較するとして、どういう項目を測定すれば比較できるか、というのも難しいところです。採血をして、炎症反応が何日継続するかとか、疼痛がどの程度であるかとか、、、炎症反応も、縫合不全でもない限り、通常の腹腔鏡手術においても数日でほぼ正常値に戻りますし、あまり差が出ないのではないかと思います。疼痛も術後鎮痛の方法が異なればまた違ってくるでしょう。硬膜外麻酔をするかどうか、経静脈的にフェンタニルを投与するか、またその濃度、組成をどう設定するかで違ってくるのではないかと思います。いろいろ条件をそろえて比較しなければ、客観的なデータが得られないのではないかということです。

また、ポートの径が細くなっても、結局標本摘出のために1箇所は創を広げることになります。結局その傷の大きさが一番大きく、最大の侵襲箇所となることには変わりありません。

最近、世の中には単孔式の手術も増えてきました。臍のところの1箇所の特殊なポートから数本の鉗子を入れられるようにして、傷ひとつで腹腔鏡の手術をしてしまうのです。低侵襲化のひとつの流れですが、この手術方法だと狭いところから何本も鉗子を入れて操作をするので、 手術はやりにくくなると言われています。

また、NOTES(Natural Orifice Translumenal Endoscopic Surgery)という新たな分野が誕生しています。胃、大腸、膣などから腹腔内にアクセスして行う手術で、体壁に創を残さずに手術を行う技術です。

結局は手術のQualityを維持しつつ(あるいは向上させつつ)低侵襲化できれば良いのでしょうが、その両立はなかなか難しいところです。

それにしてもどんどん新しい道具や手術方法が出現して、私自身、どこまでついていけるかなと思います。患者さんや、内視鏡外科医以外の人々が どこまでこういう我々のこだわりを理解し、期待しているのか、していないのか、我々は考えておく必要があります。

職人としてのこだわりと、研究者としての向上心と、医師としてどれだけ国民の健康に寄与するかというところのバランスを失わないようにしたいと考えています。

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8月 11 2011

アジア内視鏡外科学会

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昨夕は学会会場の下見と夕食のために付近を少し歩きました。学会出張に際して観光するのはよろしくないと言われていますが、さすがに徒歩5分のマーライオンくらいは許していただけるでしょう。 世界三大がっかりとも言われていますが、まあこんなものかなと思いました。ただ、これを見るためだけにシンガポールに来る人はいないでしょうけど。。。

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朝8時から8時半の間にポスターを貼るようにという指定があったので、なんとか8時半ちょっと前に会場入りしました。

ボードにはまだほとんどポスターが貼られておらず、真面目に時間通りにやってきた私はちょっと拍子抜けです。

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お隣りのボードに札幌医大の先生がポスターを貼っておられたので、写真をとっていただきました。証拠写真です。

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学会会場は、そんなに大きくありません。たしかにシンガポールという国の規模ではそんなに大きなコンベンションセンターは必要ないのかもしれません。日本の消化器外科学会などのほうがよほど規模が大きいです。

フロアには女性が結構いました。1割弱くらいでしょうか。しかし、司会者やシンポジストなどは男性ばかりで、私が参加した大腸癌のセッションで女性のドクターが発言している場面はありませんでした。ただ、企業のブースで熱心に説明を聞いているイスラム圏の女性もおり、女性の内視鏡外科医はあちこちで活躍しているものと感じました。また、ヘルニアのセッションでは女性の発表者が3人いました。

一方、学会の運営はちょっと適当です。企業や学会のスタッフがランチョンセミナーの会場の隅っこでしゃがみ込んでランチを食べていたり、プレゼンのパワーポイントファイルが発表最中に不具合を起こしてもテクニカルスタッフはいい加減な対応しかしなかったり、セッションの最中に会場で携帯電話があちこちで鳴り響いたり、かなり適当な印象です。

まあ、ショッピングモールでも、レジ横でスタッフが普通にランチを食べている光景をあちこちで見ましたのでそういう「ゆるい」お国柄なのでしょう。

そういうところも含め、斜陽の日本に比べるとなんとなく上向きというか発展途上な感じがします。 日本は住みにくいというか生きにくいというか、 自縄自縛に陥っているところもあるように思います。

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8月 10 2011

シンガポール到着

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アジア内視鏡外科学会参加のため、シンガポールにやって来ました。

関空からシンガポールまでは6時間ちょっとのフライトです。 エコノミークラスに乗ると、とても窮屈で足も動かせず、なかなか立って歩けないため、自分が何だか荷物になったような気分になります。エコノミークラス症候群とはよく言ったものです。ようやくチャンギ空港についた後は悩まずにタクシーでホテルまでやって来ました。学会指定のホテルで、会場からは近いはず、です。

どこもかしこも工事中で、穴をほったり鉄骨を組んだりしています。私の部屋から、ホテルの上に船型のプールの乗っかったマリーナ・ベイ・サンズが見えます。

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多分、マーライオンも近くにいる筈なので、夕食の時にでもちょっと見てきます。

今回、新しいパスポートではじめて出国しました。 私のパスポートは旧姓併記なので、

ABC(OKOSHI)
KAE

と記載されています(ABCは戸籍名)。航空券にはかっこが記載できないようで、

ABCOKOSHI
KAE

となり、すごい違和感を感じます。学会登録は

OKOSHI
KAE

なので、学会を通して予約したホテルのブッキングはその通りになっています。クレジットカードも同様です。

入国審査の時、若干手間取ったような気もしますが別に何も言われずに入国しました。日本国のパスポートはまだまだ信用度が高いと見えます。

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7月 16 2011

消化器外科学会に参加して(2日目)

消化器外科学会は最近ペーパーレス化しています。学会誌がオンラインのみになりました。

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今回の学会はなんと抄録集までペーパーレスになってしまい、webで見るか、iPadなどのアプリで見るかということになってしまいました。

これが使いにくいアプリで非難轟々です。私もiPadを持っているので早速使おうと思いましたがまったく使えずにiPadをもつのをやめました。当日簡易版のプログラム集が置いてあったのでそれを持ち歩きました。これで、聞きに行こうと思う演題のページの角をちょっと折り返したりして持ち歩けば十分です。

2日目は自分も発表する予定だったのですが、行きの新幹線の中でプレゼンテーションのファイルを修正するという綱渡りになってしまいました。朝4時30分に起きたのですが、出張のために色々と準備が必要で、さらに思いのほか子どもたちも早く起きてしまったので自分の仕事が進まなかったのです。

新幹線の中でパソコンに向かっているビジネスマンの方は多いのでなんてことはないと思っていましたが、微妙に揺れる東海道新幹線の中で作業するのは目が疲れました。実に目に良くないです。

学会会場で、女性外科医の手の計測をしている方にリクルートされて計測場所に連れていかれました。様々な手術デバイスが外国人のおそらくは男性医師の手のサイズに合わせて作成されているので、私のような普通の日本人女性の手には余るのです。日本の女性外科医の手の測定をして新しいデバイスの開発のデータにしようという「外科医の手」プロジェクトです。

握力を測定したり、手の各部位の測定をしたりしました。握力測定は、握力計の握る幅を6種類に設定して測定しました。やはり、幅が広いと力が入りにくいです。

お昼のランチョンセミナーは、整理券が事前になくなってしまった(つまり、満席になってしまってお弁当が当たらない)のですが、「男気を出して」勉強のために「直腸を極める」というセッションに行ってきました。

午後からは高齢者大腸癌の諸問題、というパネルディスカッションで発表することになっていたのでそれに参加しました。私は、65~74歳、75~84歳、85歳以上で高齢者を分類して大腸癌手術でどの程度の合併症があったかなどを提示しました。高齢者だからといってそんなに合併症が極端に増えるとか術後在院日数が増えるということもなく、腹腔鏡手術も安全に実施可能であったという結論です。

高齢者の大腸癌を手術する機会はこれからもどんどん増えると思います。高齢だから、という理由だけでは手術を避ける理由にはならないでしょう。また、大腸癌の場合、放置すると腸閉塞をきたしたり、穿孔したり、大出血をきたしたり結局緊急手術になってしまうこともあり(どういうわけか本人や家族が手術をためらっていても、緊急事態になると手術をして欲しいと依頼されるものなのです)、リスクが高いからこそ予定手術できちんと手術をしたいものです。

夕方のイブニングセミナーでは、直腸の解剖のセッションに参加しました。人気の先生方のセッションということで一番大きな会場も盛況でした。 ここでも細かい膜の解剖や「結合組織間隙」などというマニアックな(すみません)話で盛り上がっていました。低位前方切除術の時にどの層で剥離を進めるか、側方靭帯の正体は何か、この部分はもう切るしかないのか、、、などなど。

この日はどっぷり直腸にひたってきました。やっぱり大腸じゃないか、と思われそうですね。消化器外科領域も取り扱う臓器が多く、もはや肝臓や膵臓のことはあまりわからなくなってきました。

帰りは上司と今日のセミナーのことや、手術のこと、これからどのように仕事をしていけばよいかなどを相談しながら帰ってきました。どのように手術を習得するかなど私にとってはなかなか難しい道のりだと感じました。

帰宅すると20時過ぎで、大急ぎで食事をして子どもたちと入浴してさっさと寝てしまいました。

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7月 15 2011

消化器外科学会に参加して(1日目)

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7月14日、15日と名古屋国際会議場で開催された消化器外科学会に参加してきました。2日とも日帰りで京都-名古屋を往復しました。

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久々の消化器外科学会参加です。会場は節電の影響でクーラーの設定温度が28度になっていて、特に吹き抜けの空間の蒸し暑さは耐え難かったです。

まずは大腸癌の手術ビデオセッションを見に行きました。会場はかなり混んでいて、参加者の熱気が感じられました。何だかんだ言っても、みんな手術の動画を見るのが好きなのですね。腹腔鏡の手術が主流になってから、手術を録画するのが当たり前になったのでこうして手術の風景をみんなで共有することが可能になりました。昔の消化器外科学会とはかなり様相を異にしておりました。

大腸癌の手術と言っても施設によって様々で、 ちょっと違うと違和感が生じるものです。それは、いつも見ている風景と違うので仕方が無いのですが・・・まだその違いを論評するレベルには達していませんが、剥離の仕方や剥離の層そのもの、使用するデバイス、おそらくはポートの位置の違いによる見える角度の違いなどでちょっとした違いが集積するものと思われます。

以前一緒に働いていたことのある先生が、新しい勤務先でどのように若い医師に手術教育をしているかということを紹介する発表も聞きました。この場合、同じような手術をしているので画像は当然ながら違和感なく見ることができます。 ただ、助手やスコピストが研修医や3年目の若手医師であるなどという条件で結構大変だろうなあと思って見ていました。でも、人に教えると自分も勉強しなければならないのでかなり勉強されていると感じました。

また、単孔式という方式で、臍の傷からポートを入れて、 そこからいくつかも鉗子を入れられるようにして手術をするシステムがあるのですが、これを直腸癌の手術に使っているという報告を見ました。つまり、傷の数が少なく(Reduced Port Surgery)、整容性が高い(真の侵襲性は???)ということです。でも、直腸の手術をするに当たっては結局もう一箇所ポートを入れてアシストしているということで、そんなに侵襲が減るのか微妙な印象を受けました。正直なところ、無理しないで従来の5ポートでいいような気がしましたが、それは今後の検討課題なのでしょう。

昼のランチョンセミナーは細径鉗子による結腸手術の動画紹介を見に行きました。実は我々のボスの発表なのですが、私は同じ職場であっても周りのドクターのディスカッションに参加する機会がないので直々に話を聴く機会が少ないと感じており、敢えて自分の上司の話を聞きに行くことにしました。腹腔鏡手術は確かに従来の開腹手術より侵襲が少ないと言われていますが、さらにポートの数を減らしたり、ポートを細くしたりすることでより侵襲を少なくできるものかどうかという挑戦が続いています。その中のひとつの試みということです。

ポートが細くなると、入れられるデバイスに制限がありますし、ふだん12mmのポートから出し入れしているガーゼの出し入れもできなくなります。それでも、ポートの数は減らさずに従来の腹腔鏡手術を踏襲しつつ整容性を向上できる可能性があります。

また、5mmのハイビジョンのカメラも出てきてかなり綺麗な画像が撮れるようになってきましたし、細径化の流れは世の流れかもしれないと感じました。ポートを減らすのとどちらの方向が主流になるのかはわかりませんが・・・

午後からは結腸癌の手術ビデオのセッションを見に行きました。左結腸の手術の方法などを細かくディスカッションしていました。どのレベルでIMVを切るか、、、網嚢腔にどのルートで入るか、、、腹腔鏡手術が主流になって、細かいところが見えるようになり、細かい外科解剖の知識が蓄積してきました。固定後の死体解剖ではわからないことが見えるようになり、さらに録画という形で記録されるようになりました。その結果、従来の開腹手術では問題にならなかったような細かいところも話題になるようになったのではないかと思います。手術がどんどん洗練化されていると感じました。こういう場所で他人に見せたくなるような手術をしたいものです。

一日どっぷり大腸につかって帰ってきました。会場から1時間30分程度で帰宅できるとはいえ、少々疲れました。大腸疲れでしょうか。

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7月 06 2011

学会の準備

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現在、来週の消化器外科学会の準備に追われています。データの入力をようやく終えて、スライドにするグラフを作成しては貼りつけ、という作業をしています。

抄録を書く時点でもっといろいろ考えて書けばよかったのですが、多忙を言い訳に(ほんと、忙しいのは皆さん同じなのですが、、、)バタバタと書いて出してしまいました。カルテにアクセスするには病院にいなければなりませんので、仕事が終わって帰宅して、子どもたちの食事や入浴のあと、夫に任せて夜中に病院に出没してはカルテにアクセスしておりました。そんな生活をそう毎日続けられるわけもなく(夫がオンコールであったり、帰りが遅かったりすれば家から出られませんし)、数日でまとめて何とか形にしてしまったという感じです。すみません。

パネルディスカッションのセッションで採択していただいたので、 発表に加えてパネリストのディスカッションの時間もあります。今年は外科学会が中止になったので、実質、私にとって今年はじめての学会になります。

今回のテーマは高齢者大腸癌に対する手術の話ですが、実は高齢者とひとくちにいっても、個人差も大きく、注意して管理すれば大きな術後合併症も殆どありません。術後の在院日数も大差ありません。

大腸癌を放置すればいずれはつまって食事ができないどころか腸閉塞で七転八倒することになります。根治性はともかく、可能なかぎり腫瘍を切除することには意味があると思います。高齢であるという理由だけで手術をしないのはよくないと思います。

もちろん、手術て切除しなければならないような大腸癌になる前に、EMR(大腸カメラで切除)できるレベルで見つかるのがベストだという気持ちに変わりはありません。

来週は名古屋日帰り2日です。名古屋はすでに通勤圏内ですね(運賃はともかく、時間的には・・・)。

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5月 31 2011

抗加齢医学会総会に参加して(3)咀嚼と嚥下について

私は常日頃、歯に無頓着な人が多いと感じています。

私自身は昔から自分の歯並びが悪いことを気にかけており、34歳になって歯科矯正をはじめました。今のところ齲歯はありません(治療済みが1本)。歯が悪くなりやすいといわれる妊娠中も軽い歯肉炎程度まででなんとか問題なく過ごしました。これからはむしろ歯周病のほうが問題になってくる年齢だと思いますので、注意しなければならないと思っています。

歯並びについては個人の好みの問題かもしれないなので矯正は別にしなくてもいいと思いますが、虫歯や歯周病は予防したほうがいいに決まっています。自分の歯を失わないための努力が必要です。また歯周病が全身の内科的疾患の原因になることがあると最近言われるようになってきました。

患者さんがふだんは入れ歯をされていても、手術の際には義歯をすべて外すことになりますので、その時にはじめて歯が悪いことに気づいてドキッとすることがあります。歯周病でグラグラだったり、虫歯でボロボロだったり、自分の歯が殆ど無かったりすると、挿管の際に折れて(抜けて?)しまわないか、術後誤嚥の原因になりやしないかと気になります。

なぜこんなことを考えるといえば、消化管の手術後には「消化のよいものをよく噛んでゆっくり食べてください」とご注意申し上げることにしているからです。しかし、自分の歯がぼろぼろであってはろくに噛まないまま飲み込んでしまい、胃腸に負担をかけることになります。

今回、抗加齢医学会で日本歯科大学菊谷武先生による咀嚼と嚥下の話があったので聞いてきました。このお話もなかなか面白かったです。

まず、いまや交通事故死よりも窒息による死亡の方が数が多いのだそうです。老健などで調査すると、窒息のリスクは
(1)臼歯部の咬合がない(つまり奥歯がない)
(2)認知機能低下
(3)食事が自立している(自分でたべている)
ということになるそうです。

奥歯がないとやはり窒息しやすいのですが、それでも、義歯をいれておけば自分の歯ほどではなくともこのリスクを下げられるので歯科治療の意義は大きいと言えます。
(2)は当然といえば当然です。(3)は、意外なようですが、すでにいろいろ体の機能が低下しているため(老健におられるような状態なので)、自分で口に含む量や速度を加減できないからむせても平気で口に入れてしまうのではないかと推測しておられました。

また、誤嚥などのために胃瘻を作ることがありますが、胃瘻造設後に「食べる機能」を再評価することは殆ど無いことを問題提起されました。すなわち、一時的に「食べる機能」が低下して胃瘻造設をしたとしても、また「食べる機能」が回復する可能性はあるわけです。それなのに、一度胃瘻を作ってしまうとそのまま胃瘻ですごさせてしまうことがほとんどだというのです。

私はいままで歯のことだけを気にしていましたが、咀嚼器官は歯だけではないというお話も印象的でした。
我々は、食べるものの性状によって下や顎の動かし方を変えているのだそうです。たとえば堅いものを食べる時には、下顎と舌を横方向にも動かしています。高齢者の中には堅いものを食べているときにもこの横方向の動きができなくなっている方がいて、うまく咀嚼できないのです。
咀嚼するための筋力が落ちてしまっているからで(運動障害制咀嚼障害)いわゆるサルコペニアが口腔にも生じているといえます。

消化管の一番上流である口腔の機能はその下流の胃や腸にとっても重要です。歯は大事だと思ってずっとその重要性を主張してきましたが、重要なのは歯だけではないのだと納得しました。しかし、毎日何かしら食べていて、どうしてサルコペニアが起きるのかちょっとよくわかりません。健康増進のために運動をするように、咀嚼力維持のために咀嚼筋に負荷をかけてトレーニングをしなければならないのかもしれません。そういうトレーニングの道具があることも紹介されていました。

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5月 30 2011

抗加齢医学会総会に参加して(2)喫煙

私がタバコ嫌いなのはこのブログをお読みの方はすでにご存知のことと思います。ここ数年喘息が出てきたこともあって、今まで以上に避けるようになりました。

先日抗加齢医学会総会に参加してきましたが、もちろん「抗加齢」に一番重要なのは禁煙ですから会場内はすべて禁煙になっています。最近では他の学会でも会場内が禁煙になっていますがどこかしら喫煙場所があることも多いです。実際国際会館内にもタバコの自動販売機が存在します。

会場に向かうために何気なく朝タクシーに乗り込んでギョッとしたのは恐ろしくタバコ臭かったことです。京都のタクシーはすでにすべて禁煙になっているので本来はありえないことですが、運転手がついさっきまで吸っていたとしか思えない有様でした。

慌ただしく乗り込んで、雨も降っているしなかなか別のタクシーも拾えなさそうだし、どんどん北に向かっていくにつれてさらに流しのタクシーはなくなるし、、、結局国際会館までそのまま乗って行くはめになりました。気持ちは悪いし咳は出るしで最悪な滑り出しになりました。

会場は禁煙ですし、さすがに抗加齢医学会参加者にはあまり喫煙者がいないようでした。それでも会場外のタクシー乗り場付近の喫煙場所には数人が喫煙していましたし、帰りに地下鉄の国際会館駅に向かっていくと、地下に降りる階段の手前で喫煙場所があって数名がぷかぷかタバコをふかしていました。ネームプレートをつけたままだったり、学会のカバンを下げていたりしたので明らかに学会参加者です。

しかし、この階段の手前に喫煙場所があるのは実に最悪で、階段を降りてしばらくの間かなりたばこの煙の匂いが漂っていました。京都市(交通局?)もちょっと喫煙場所を考えなければならないと思いました。こういうタバコを吸わない人間が通る場所に煙が漂うようなことをしてはなりません。全く分煙になっていないからです。

しかもその喫煙場所には「抗加齢医学会総会」の看板が立ててあって、強い違和感を感じました。

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5月 28 2011

抗加齢医学会総会に参加して(1)大腸癌

京都国際会館で開催された抗加齢医学会総会に参加してきました。来年は横浜で開催されるので、多分なかなか参加できないと思って頑張って行ってきました。

京都府立医科大学消化器内科の内藤裕二先生が運動と食事による大腸癌予防の可能性について発表されました。大腸癌のESD(内視鏡粘膜下層剥離術)を頑張っておられるなど、30年近く大腸癌の診療のために忙しく働いてきたのに、日本人の大腸癌による死亡率は下がるどころか増加傾向で、自分が一体何をしてきたのかとやや自虐的に離しておられました。多分話を面白くするためのレトリックだとは思いましたが、この視点は重要だと感じました。

私自身について考えてみると、外科医として目の前の患者さんの手術をすることも大事ですが、医師としては日本の大腸癌患者を減らすとか、大腸癌による死亡を減らすとかそういうことを考える視点を失ってはならないと思います。最先端の医療、高度な技術に邁進することは外科医の満足をもたらすかもしれませんが、社会全体の幸福につながるのかどうかということも頭の片隅に置いておく必要があります。

まず、大腸癌の二次予防として、日本の癌検診の非効率性についても言及されました。これはいつも私が実感していることで、全く同感でした。
日本は大腸癌により死亡リスクが高いので大腸癌検診は重要だと思われます。一般に大腸癌のスクリーニングとして便潜血反応が行われることが多いです。ただし、

10万人が受診の対象になっているとして、
14500人が受診し、
8%(1160人)が便潜血陽性となり、
そのうち60%(696人)が精密検査を受け(つまり残り464人は便潜血陽性を無視)、
そのうち3%(21人)に大腸癌が見つかって治療を受ける

(注:括弧内は私が計算したもの)

ということで、そもそも受診する人が少ない上に、便潜血陽性で引っかかっても精密検査を受けない人が4割もいるという指摘をされました。ただ、このデータの出所をちょっと聞き洩らしましたので詳細についてはわかりませんが、私の実感としても、検診受診率が低いということと要精密検査がでても放置する人が多いということについてはその通りだと思います。

次に一次予防についての話題になりました。
以前は大腸癌は食物繊維の不足や動物性脂肪の過剰摂取がリスクとして喧伝されてきましたが、最近はそれらの寄与についてはあまり根拠がないことが分かってきました。身体活動により大腸癌のリスクが下がり、過体重により大腸癌のリスクが上がることが明らかになっています。

つまり、適度な運動と適切な体重維持が大腸癌の予防になるということになるでしょう。

さらに抗酸化物質の摂取が効果的で、、、、と先生のご研究の話になっていきました(先生ご自身はアスタキサンチンに注目されています)。つまり、大腸癌は二次予防(検診による早期発見)のみならず、一次予防(癌になることじたいを予防する)ことが可能な癌と言えるでしょう。

特定の抗酸化物質をサプリメントなどで飲むことが良いかどうかはさておいて、厚生労働省が勧めている「1日に野菜350グラム、果物200グラム」を頑張って食べていくことは大事だと私は考えています。

ちなみにこれがランチョンセミナーで出たお弁当のメニューです。普通の学会だとエビフライとか魚のフライとか天ぷらとか揚げ物を含んだ幕の内弁当みたいなのが多いのですが、抗加齢医学会のお弁当は松花堂弁当で、量は少ないのですがなかなか品数も多くて美味しいです。ちなみに右のフードアイコンのAOUとは抗酸化価のことです。

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残念ながらお弁当の写真を撮る前に食べてしまいました。
・・・しかし、あとでおなかがすいてさらにチョコレートケーキとアイスクリームを食べてしまい、せっかくのアンチエイジングなお弁当の効果を台無しにしてしまいました。健康な生活というのは難しいものです。

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