新型インフルエンザのため、一時は開催が危ぶまれたわがシンポジウムですが、本日無事に開催することが出来ました。
開会のご挨拶は京都大学大学院医学研究科長の光山正雄先生にお願いしました。光山先生はご多忙の中、最後までご参加いただき、いろいろとご発言くださりました。今まで「女性医師支援」などについてはあまり関与しておられなかったそうですが、これからの医学教育などを考える上でひとつの視点としてご認識いただけたかなあと感じました。
その後、大阪厚生年金病院院長の清野佳紀先生より、大阪厚生年金病院での取り組み内容についてご講演をいただきました。女性医師のみならず、すべての職員のワークライフバランスを考えた職場のあり方を模索されています。
特に看護師では医師よりはるかに女性の割合が多いことから病院の正職員の78%が女性となっており、女性が働きやすい現場を作らなければ病院として成り立たないということでした。
実は私も個人的に京大病院の看護師さんが京大病院の看護師の離職率が高いことを憂いているのを聞いたことがあります。
また、育児期間の支援としても、一時的に時短や勤務日を短く設定しても、慣れれば単に1日8時間勤務、残業・時間外当直などなしという基本の勤務をたいていの女性医師は継続できるということも印象的でした。
また、会議やカンファランスを時間内にするようにすれば、かかる時間が半分程度になったということです。
18時からのカンファランスに出席することがどれだけ大変かということは育児中の女性医師が口をそろえて言うことです。カンファランスは患者さんの治療方針を議論するなど、日々の診療の意思決定において重要な場です。これに参加できないというのは自分の意見が全く反映されないことになります。
次に、内閣府男女共同参画局企画官の大西知子氏より、政府の取り組みについてご説明いただきました。
我々現場の医師の本当のニーズを行政にどうやってくみ取ってもらえばよいのか、などという質問が出ました。医師会や学会などから意見を抽出するとしても、そもそも医師会や学会のトップに女性はほとんどいません。
休憩をはさんで、京都府医師会の桑原理事より、京都府医師会としてどのような取り組みをされているかというご紹介をいただきました。保育サービスの充実や、ドクターバンクの解説などについてご説明いただきました。
最後に私が京大病院で行った女性医師に対するアンケート調査の結果を説明し、今後経済研究科の先生方と共同研究する予定の内容について紹介しました。
また、女性医師支援に関わって思うこととして、
(1)人間の想像力の限界
自分以外の人間に共感し、その立場を理解することは難しい。
(2)男女平等の真のあり方
女性は戦略なしに男性と同じ土俵に立つことは困難なのかもしれない。
妊娠・出産は女性にしかできないが、育児は男性や社会全体でも分担できるはずである。しかし、現状は母親の負担が重くなっている。
(3)人を評価することの難しさ
育児をしながらでも女性医師が医師としての仕事を「継続する」ことは可能だが、男性医師と同等・それ以上のポストを得て評価されることは可能か。
ということを挙げました。なかなか難しいです。
男女差はいかんとも埋めがたいですが、行政や社会のサービス、世の中の人のものの考え方がもう少し変わっていけば男女差を意識する機会は減っていくと思います。
たとえば、将来の出産や育児を考えて、科を選ぶ時点で継続しやすそうな科を選ぶということは女性医師にはよくある話ですが、男性医師がそういう観点で科を選ぶことは無いように思います。
女性ゆえにそういう戦略を持たなければならないのか(持った者が賢いのか)、あるいは男性でも女性でもライフイベントにかかわらず自分のキャリアアップを形成していけるような環境を整備していくべきなのか、難しいところです。現状では両方をにらみつつ、ということになってしまうでしょうか。
最後に、京都大学女性研究者支援センター推進室長で文学研究科教授の伊藤公雄先生より閉会のご挨拶をいただき、懇親会へと移りました。
今回のシンポジウムの提言としては、
(1)医師の勤務のあり方・・・主治医制からチーム制(シフト制)、短時間勤務の正職員など様々な働き方を認める
(2)地域連携のあり方・・・開業医と勤務医の役割分担
(3)医学教育のあり方・・・もっと若いうちから将来に対するビジョンを持たせるような教育を行う(もしかすると高校以前の問題かもしれない)
(4)男女平等のあり方、女子教育のあり方
などと私なりにまとめさせていただきます。
それぞれの演者の後の質疑応答が盛り上がり、最後の意見交換会の時間がとれませんでした。それぞれの質疑応答が面白かったのでまあそれはそれでよかったと思っています。
ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。