Archive for the '消化管' Category

2月 05 2012

骨盤の解剖

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昨日、骨盤の解剖の研究会に出席してきました。重要な研究会なので夫が待機当番であったのを無理に後退してもらい、事前に夕食の準備をし、ベビーシッターさんに子どもたちの保育園のお迎えと有職の介助を依頼して、夕方の研究会に備えました。

講師は東京医科歯科大学臨床解剖学教授秋田恵一先生です。

骨盤の筋肉、血管、自律神経の詳細、また男女差、加齢変化について詳細なご講演をいただきました。

他の動物は外側から肛門が見えるのに、ヒトは構造上、外から肛門が見えなくなっている、というお話しに始まり、マウスの胎児の詳細な総排泄孔の観察やオオサンショウウオ(!)など他の動物との比較解剖学などから既存の解剖学の教科書とは異なる知見を得ておられ、大変興味深く拝聴いたしました。肛門(総排泄孔)は基本的に足と足の間に存在し、足の筋肉と密接な関係があるということなのです。

既存の解剖学の教科書は、献体されたご遺体の解剖から得られた結果であるので、高齢者の解剖所見であることが多く、実際にもう少し若いご遺体では所見が違うこともままあるとのこと。まだ、男性と女性では自律神経の密度に差があるというお話でした。女性の自律神経はかなり分散傾向で疎なので、妊娠とか出産というダイナミックな変化に対応するために、男性のようにがちがちに固定されていないのかも、と思いながらうかがっておりました。

詳細は難しくて、一度聞いただけですべてを理解するには至りませんでした。しかし、骨盤底の筋肉は曖昧模糊としており、個人差もあり、男女差も加齢変化もあり、無理に○○筋という名前を付けることに終始するのはよくないのではという示唆をいただきました。

何冊もの本にできるくらいの濃い内容でした。

・・・・・・・・・・・研究会は夜20時30分を過ぎて終了し、懇親会がそのあとにあったのですが私はすぐに帰宅しました。子どもたちの起きている時間に帰らなければならないからです。そそくさと夕食を食べて入浴後、子どもたちに本を読んでやって自分も一緒に就寝しました。

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2月 25 2011

便潜血の意義

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大腸癌の検診としては、まず便潜血というものが侵襲も少なく簡単にできます。ただ問題は、簡単にできるからかえって安易に考えられているところがあるのではないかということです。

実は、便潜血が陽性だという結果をもらっても、かなりの人が精密検査すなわち大腸ファイバーを受けないのです。「自分は痔があるからそのせいだ」と思い込んでしまうのです。

確かに大腸癌の患者数より痔の患者数のほうがはるかに多いのですが、オーバーラップしていることもしばしばあります。すなわち、大腸癌と痔と両方を患っている人もいるということです。

しかし、人はどうしても悪い情報を自分の都合の良い方向へ歪めて受け取ってしまいがちなので、便潜血陽性という事態に大腸癌かもしれないというよりは痔だからという納得の仕方をしてしまうのだと思います。

かなりの進行癌の方で、よくよく話を聞いてみると数年前から会社の検診で便潜血陽性を指摘されていたにもかかわらず放置していた、などということもあります。一度カメラをして痔以外に何もないことを確認すれば良いのに、「大腸のカメラはものすごくしんどい」などというネガティブな話を人から聞いてしまうと、しんどい検査は受けたくないと考えてしまうようです。

今日、私の共同研究者のドクターと話していたのですが、アメリカではそういう検診後の精査に関する基準がはっきりしているそうです。一方で日本は検診の基準はなんとなく曖昧です。

少なくとも50才以上で便潜血陽性であれば大腸ファイバーを一度はやっておいたほうがよさそうです(家族歴があればもっと早くから実施する)。大腸癌は日本でもかなり増えてきましたし、早期に見つかれば治癒も十分可能なのでがん検診の意義は大きいと思います。

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11月 10 2010

消化器外科学会専門医試験受験記

8日、9日と東京の某ホテルで開催された消化器外科学会専門医試験を受験してきました。8日の試験はマークシートでしたがはっきり言ってまったく手応えがなく、特に画像の問題がほとんどわからなかったので落ちたと思っています。9日は口頭試問を受けてきました。全く何も答えられないということはありませんでしたが、ものすごくいい点をもらえたとも思えません。

画像の問題は内視鏡の問題が多いという印象を受けました。自分が普段から画像を見る機会が少ないことを実感しました。カンファランスに顔を出さないため、自分の担当する患者以外の画像を見ながらディスカッションする機会がほとんどないのです。

(病院にいる時間が限られているというのはこんなところにしわ寄せが来るのだと実感しました。何とかカンファランスにも出席したいものですが、夕方からなのでなかなか現実的には厳しいです。ちょうど子どもたちに夕食を食べさせなければならない時間にあたります。)

それでも試験勉強をして思ったことは、消化器って面白いってことと、だけど食道や肝臓・膵臓の手術にはなるべく関わりたくないってことでしょうか。 侵襲が大きくて合併症の確率が高く、術後管理もリスキーです(しかも何かあったら業務上過失致死で逮捕されたり、賠償請求されたりする時代にあっては医療が萎縮します)。しばらくは腸管を相手に仕事をしているだけで精一杯です。そもそも腸管は腸管で出血したりねじれたり腫瘍ができたり穴があいたりいろいろありますし。

来年も受験するとすれば、内視鏡の写真集とか消化器内科のテキストで勉強しようかなと思います。そのほうが効率よく点が取れそうな気がしました。

ところで専門医試験を受験するために仕事を休んだわけですが、総務掛に問い合わせたところ、医員は出張扱いにしてもらえないので年休を取らなければならないと言われました。出張費が出ないとか、受験料を出してもらえないというレベルではなく、ただでさえほとんどない年休を消費しなければならないという現実に愕然としました。

年休をとることにしたので試験の後は直帰せず、試験会場の近所にあった靖国神社に参拝し、遊就館を見学してきました。その後銀座で家族へのおみやげを購入して帰宅しました。 何しろここ1、2週間は子どもたちと遊んでやる余裕もなく、試験前日は夫がひとりで子どもたちを動物園に連れ出してくれて何とか勉強時間を確保したような有様でした。私が東京で試験を受けていた8日は夫が1日休暇を取り、子どもたちに食事を作って食べさせ、保育園に連れていき、掃除洗濯・食事の準備などの家事をし、子どもたちを迎えに行って風呂に入れて寝かしつけてくれていたのです。また、9日の朝もひとりで食事の用意をして食べさせて保育園に連れて行って急ぎ出勤(ただし少し遅刻)とたいへんだったようです(なにしろ1歳児と2歳児なもので、なかなか言うことを聞かないのです)。

試験が不出来では顔向けできないのですが、 仕方がありません。帰宅後は子どもたちの大好物のミネストローネを作って楽しく食べました。

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10月 25 2010

試験勉強

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久々に試験勉強をしています。来月の消化器外科学会専門医試験は範囲も広く、自分の専門外のこともたくさんあるので何から手をつけていいのやら、といった感じです。

過去問はこんな感じです。
また、試験に出ると言われている教育集会の内容はこんな感じです。
膨大にあります。

検査から手術そのもの、術後管理、抗癌剤治療・放射線治療などの手術以外の治療法について、、、、臓器も食道、胃、小腸、大腸、胆嚢、膵臓、肝臓、脾臓と消化器全般にわたります。

こうやって勉強していると、自分が肝臓や膵臓などの実質臓器に興味がもてなかった理由もなんとなく実感できます。勉強しても頭に残りません。
(ちなみに私は現在下部消化管を専門にしています)

それにしても、消化器「外科」医なのに、抗癌剤やら放射線やらいろいろ勉強する項目が多岐にわたり、疲れてしまいます。Aという抗癌剤単独よりもA+Bといった組み合わせだと5年生存率が〇〇%アップするが、××の副作用が増える、というような話になるとまたこの数字が覚えられなくて悶々としてしまいます。

そもそも抗癌剤の治療は外科医ではなく抗癌剤の専門医(腫瘍内科医?)がやったほうがいいと思うのですが、日本の癌治療のシステムはどうしても一度手術をすると担当した外科医がずっと診ることになっているようです。場合によっては終末期の緩和医療まで。

それにしても、勉強しているとその内容に関して、今までに出会った患者さんのこともいろいろ思い出してしまいます。合併症のなかった方はあまり印象がないので記憶に残りにくいのですが、様々な合併症があった方々とは付き合いが長くなったこともあり、よく覚えています。名前は忘れてしまっても、お腹の所見とか、CTの画像とか、、、、

お勉強は常に継続しなければなりませんが、こういう試験はその動機づけになります。

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9月 29 2010

胃腸かぜ(感染性胃腸炎)

先々週末からあった心窩部痛に加え、今週は胃もたれ、食思不振、軽度の嘔気をきたし、これは悪い病気なのではないかという考えがちらりと頭をよぎりました。特に昨日は朝からほとんど何も食べることができず、ひたすら水分摂取に徹しました。全身の倦怠感と眠気、下腿の筋肉痛は「胃腸炎」が全身に影響をおよぼしているようでなんとなく重篤感がありました。

うちの家族が少しずつ時間差をおいて同様の症状をきたしているところを見ると、どうも感染性胃腸炎の可能性が高いのではないかと現在は考えています。ただ、先々週末からの心窩部痛というのは説明できないので、友人のドクターに胃カメラを勧められています。

嘔気のある時は時間をあけて少しずつ水分を取り、大丈夫そうなら少しずつ消化の良いものを食べて様子をみるのが良いと思っています。無理に物を食べる必要はなく、胃腸を休めて水分摂取を心がけるべきです。

今日の午後くらいから私の症状は改善し、少なくとも嘔気はなくなりました。食欲はまだありませんので少しずつうどんや雑炊などを食べています。季節の変わり目で体も弱っているのかもしれません。

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2月 11 2009

大建中湯と腸閉塞

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本日は大建中湯(だいけんちゅうとう)という漢方薬に関するフォーラムに参加してきました。

一般的には大建中湯とはあまり知られていないかもしれませんが、外科医には大変ありがたい漢方薬です。腸閉塞の患者さんの治療としては、

(1)絶飲食。

(2)鼻から腸管まで長いチューブを入れて貯留した腸液などを吸引し、腸管内の減圧を行う(軽度の場合は胃までのチューブのこともある)。

(3)手術

などと段階を踏んでステップアップしていくわけですが、 (2)のチューブから大建中湯を投与することで、手術に至らずに軽快することが結構あるのです。

今まで、なぜ効くのかは知らないまでも、先輩のドクターに教えられて大建中湯を投与するようになってその効果をしばしば実感していました。

今日のフォーラムではなぜ効くのか、また腸閉塞以外にも効く可能性のある疾患について勉強してきました。

大建中湯は乾姜(ショウガ)と、山椒(サンショウ)、人参(高麗人参)の組み合わせにより薬効を示しますが、なんともシンプルな組み合わせです。漢方薬とはいうものの、日本独自の進化を遂げていて、中国のもともとの処方とは異なり、日本オリジナルとなっているところが興味深いところです。

腸管の血流を増やすこと、腸管内の細菌の悪影響を抑制する(bacterial translocationを抑える)などが今のところ作用点として考えられているというお話でした。

そのほか、肝硬変モデルで肝臓の線維化を抑制するとか、クローン病の再燃を抑制する可能性があるとか、大変興味深い研究結果を聞くこともできました。私自身、放射線による腸管の線維化について実験を重ね、クローン病のマウスモデルも扱ったことがあるものですから、少々興奮してしましました。

漢方薬も、traditional Japanese medicine (Kampo)として世界に発信していくべき時なのでしょう。そのためには欧米でも受け入れられるように、「よくわからないけどとにかく効く」ではなくどういう機序で効くか、ということも併せて示していかなければなりません。

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6月 12 2008

点滴の功罪

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私は基本的に点滴が嫌いです。医者のくせに好き嫌いを言うな、とお叱りを受けるかもしれませんが、必要以上に点滴が大好きな方が多すぎてうんざりさせられるのです。

もちろん、経口摂取ができない場合、下痢や嘔吐、出血などによる急速な循環血液量の減少を補わなければならない場合、効果的にすみやかに薬剤の血中濃度を高める必要がある場合、時間当たりの投与量を一定にすることで血中濃度を一定に保ちたい場合、内服薬には同効果の薬剤がない場合など、必要な場合は点滴を行うことを躊躇しません。

私が外来をしていて今まで嫌だったことは

(1)風邪を引いたので元気が出る点滴をしてほしい

(2)いつもの痛み止めの点滴をしてほしい

(3)いつもしてもらっている栄養の(?)点滴をしてほしい

・・・・・・・

(1)風邪に効く点滴はありません。もちろん熱があれば脱水気味になりますので、水分補給は必要です。しかし、のどが痛くて水も飲めないというのであれば別ですが、経口摂取ができるのであれば薄めのスポーツドリンクなどを多めに飲むことで対応できます。わざわざ点滴をする必要はありません。

(2)経静脈的に投与された薬剤は急速に血中濃度が上がりますが、下がるのも早いので効き目がすぐに切れてしまいます。慢性の疼痛には内服薬を定期的に飲むほうがよいと思います。

(3)なぜか理由もなく週に2回とか3回250~500mlの点滴を定期的にしてもらっているという人がいます。お年寄りに多いです。中身はせいぜいビタミン剤と薄いブドウ糖と電解質で、普通にご飯を食べていて歩いて通院しているのになぜ?と思うのですが・・・

私は頭の固い医者なので、納得のいかない処方はいたしません。たとえ、定期処方だといわれてもお断りすることにしております。中には抵抗するのに疲れて「患者さんの希望」ということで処方しておられる先生もおられるかもしれませんが、私はまだ抵抗しています。

今話題になっていますが、三重県の整形外科のクリニックで点滴を受けた複数の患者さんに腹痛や発熱、嘔吐、ふるえ、白血球減少などの症状が見られ、73歳の女性がひとり亡くなったということです。たいへんお気の毒に思います。点滴の内容は生理食水にノイロトロピン、メチコバールを混注したもので、整形外科の処方としては一般的といえるのではないでしょうか。私は前述したようにこの種の点滴は処方したことがありません。

今日のYOMIURI ONLINEによれば、患者さんの血液からセラチアが検出されたということで、常温で作り置きした点滴バッグ内で繁殖した菌による感染症ではないかということです。

今回の件はこれから調査が進んで原因ももう少し明らかになるでしょう。点滴の混注後常温で保存するというようなことはあってはならないのでこの点は徹底するべきだと思いますが、それとは別に、必要以上に点滴に頼りすぎる現状をもう少し改善したいと考えています。

私は一応消化器外科医なので主張しますが、そもそも消化管の役割を軽く考えている人が多いのではないでしょうか。消化管の内側は細菌や食物残渣や有害な化学物質やらでいっぱいですが、消化管の外側は無菌です。消化管は膜一枚(とはいえ、テニスコート1.5枚分くらいの面積があります)でそういうものから体を守るバリアの役割を果たしています。消化管は重要な免疫機能を担っており、生体防御の最前線ともいえるでしょう

ほんの短期間絶食にするだけで腸管の粘膜は萎縮し、その免疫機能は低下します。容易にこのバリアが破られる事態になり、全身に細菌や毒素がまわり始め、重篤な状態にもなりかねません。経口摂取できるものなら経口摂取するに越したことはないのです。例えば、広範囲熱傷後はいかに速やかに経口摂取を再開するかが重要だといわれています。熱傷は皮膚という外界とのバリアが障害された状態なので、もうひとつの重要なバリアで免疫器官である腸管粘膜を守るためには絶食にしないほうがよいのです。もちろん大量の体液が失われますから急速な体液補充のために点滴は必要ですが、経口摂取との二本立てが基本です。

小腸が好きで消化器外科医になった人間なのでちょっと消化管に肩入れしてしまったかもしれませんが、口から入れられるものは口から、がやはり基本だと思います。必要以上に点滴に頼るべきではありません。

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